2023年「台湾有事」で必勝を誓うアメリカの本気度。日本はどうだ?

2022.12.25
 

見え隠れするアメリカの本音

習氏は国家主席に就任して間もない2013年、米国を訪問してオバマ大統領と会談した際、太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間があると太平洋分割統治論を提唱し、米中の新型大国間関係をオバマ大統領に認めさせることに成功したが、習氏には第一列島線上にある台湾を支配下に置き、そこを軍事的要衝として米軍に圧力を掛け、西太平洋で軍事的、経済的に影響力を確保する狙いがある。

要は、台湾が中国の支配下に置かれることは、米国にとって民主主義が権威主義との戦いの敗北したことを意味するので、バイデン政権にとっても譲れない一線になってきている。今日、台湾問題は米中間で最重要イシューになっており、それを巡って今年火花が散った。

欧米とロシアの対立が続くなか、米政府高官は12月中旬、米国が来年主催するアジア太平洋経済協力会議(APEC)にロシアが出席することは可能との見方を示した。その理由について明確な言及はなかったが、米国としては対中国に集中したいことから、ウクライナ問題で時間を取られたくないという本音が見え隠れする。最近、米露の間では相互に囚人の交換も行われたが、ウクライナが侵攻されなければ、対中国でロシアと一定の協力を試みるオプションも米国は持っていたと思われる。それほど、米国にとって対中国は重要イシューになっている。

激変する恐れもある日本を巡る安全保障

このように台湾を巡る国家間関係が悪化するなか、台湾では11月下旬、統一地方選挙が行われ、与党・民進党が敗れ、蔡英文総統は自身が兼務してきた党のトップの主席を辞任する意向を表明した。これによって国民党が台湾社会で人気を回復し、台湾有事を巡る緊張が緩和されていくとの楽観論が浮上している。

しかし、それは単なる期待でしかない。11月の統一地方選挙で台湾市民の焦点になったのは経済など内政事項であり、外交安全保障政策は重要な論点にはならなかった。要は、2024年1月の台湾総統選挙で国民党が有利になるわけではない。また、中国の軍事的圧力が強まり、米中対立が激しくなる中、台湾は防衛面でどうしても米国の支援を必要とすることから、民進党国民党を問わず中国寄りの姿勢を示すことは政治的に難しくなってきている。よって、11月の統一地方選挙が台湾を巡る緊張にいい兆しを与えることにはならなかった。

以上のように、台湾情勢を巡っては今年悪いニュースしかなかったが、今日の環境は来年も続くことになる。来年台湾有事が勃発する可能性は十分にあり、日本を巡る安全保障も激変する恐れもある。我々はいっそう厳しい時代に入っている。

image by: Carlos Huang / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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