今回のコロナ禍でわかったことは、医師の世界での相互批判の欠如だ。
もともと大学医学部という組織は、相互批判ができない組織だった。
たとえば、コレステロール値を下げると虚血性心疾患のリスクは下がるが(これだって大規模比較調査をしていないからあてにならないが)、がんのリスクは上がるし、男性ホルモンは減るし、うつのリスクも増えるが、循環器内科がコレステロール値を下げろというと、どこの科の医者も批判はしない。
かくして、いろいろな臓器別の診療科でいろいろな薬を出されても、よその科の医者が「これはまずい」と言わないから、薬が増え続ける。
コロナ禍でも、感染症学者が好き放題な自粛政策を強要しても、それがメンタルや高齢者の身体機能に影響するというような批判をしない。
だから教授になってから1秒も勉強しなくてもクビにならないのに、教授と名のつく人間を呼んで、そいつに古い医療常識やでまかせを言わせても文句がこない。
こんな奴らは大学の中ではもっと威張っているだろうから、でまかせの言い放題だ。
質のチェックをしないで医学教育を続けていていいのか?
欧米であれば臨床のできる医者が国家試験の問題を作るが、日本では医学部の教授たちがオタク問題を出して喜んでいるから、その教育を受ける医学生は気の毒だ。
しかし、医者たちは、患者の興味には関心がないらしく、先日も私の患者さんが、「今、かかっている東大の老年病科の医者は、和田先生の名前を知りませんでした」と教えてくれる。
老年病科の医者なら、私の考えに賛同する必要はないが、高齢者の間で一番読まれている本くらい目を通したらどうなのだろうか?
※本記事は有料メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2023年1月21日号の一部抜粋です。
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