威光に翳りも。プーチンのウクライナ軍事侵攻は、結局「失敗」だったのか?

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誰もが予想しなかったロシアによるウクライナ軍事侵攻から11ヶ月が経過し、疲弊を隠せない国際社会。欧米諸国はウクライナにさらなる武器供与を決定するなどますますロシアに対する圧力を高めていますが、勝ち切れないでいるプーチン大統領にとってこの戦争は「失敗」だったのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、プーチン氏が軍事侵攻という暴挙に出た動機を改めて分析。その上で、「プーチン大統領は失敗したのか否か」について詳しく検証しています。

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プーチン大統領は失敗したのか?

いきなり質問です。

「もし皆さんが日本の45倍の領土を持ちつつ、その6割が永久凍土に覆われ、国土の8割にあたる土地で人が住めない環境にある国で、国内に190近い少数民族を抱え、14の国々と国境を接している国のリーダーなら、この世界はどう見え、その世界でどう振舞うでしょうか?」

勘のいい方ならすぐにこの“リーダー”が誰のことかお分かりになるかと思います。

はい、典型的なランドパワーの国であるロシアの大統領ウラジーミル・プーチン大統領です。

プーチン大統領が始めたウクライナへの侵略を支持することはできませんが、今後、どのような解決策を見出すことができるのかという観点からは、このような暴挙に出た動機を再度検証し、理解しなくてはならないと感じます。

世界最大の領土を持つにもかかわらず、そのほとんどが不毛な土地であり、旧ソ連崩壊後は14の国々と国境を接することになったロシアを前任者から受け継いだのがプーチン大統領です。

他国に囲まれているという状況を持つ国々の特徴としては、最大の国家安全保障対策・国防策は周辺国に攻め込み、領土を拡大し続けることですが、そこには終わることのない恐怖の連鎖とそれを消し去るためのさらなる攻撃が待っているだけです。

ロシアがウクライナに侵攻してからすぐにプーチン大統領が子供からの質問に答える番組がありましたが、その際、子供に「ロシアの国土はどこからどこまでだ?」と尋ね、「ロシア・ウクライナ国境やクリミア半島からシベリアまで」と答えた子供に対し、「ロシアの国土は陸地が続く限りどこまでも広く永遠だ」とプーチン大統領が答えたエピソードを急に思い出しました。

まさにこれこそが、ロシア、そしてプーチン大統領の奥底に秘められたmentalityなのではないかと思います。

クリミア半島の併合
北オセチアへの攻撃(ジョージア)
チェチェン共和国への攻撃
そして、今回のウクライナ侵攻と東南部の一方的な併合・編入…

大ロシア帝国の復興を夢見るプーチン大統領という表現を私もしてきましたが、権威の復興・力の拡大というよりは、果てしない恐怖への自然反応と表現できるのかもしれないと感じています。

さて、そのプーチン大統領が始めたウクライナへの侵攻から1月24日で11か月が経ちました。

2022年2月24日に侵攻した当初「3日ほどでウクライナ全土が陥落する」と評価されていたことを踏まえると、プーチン大統領とロシアの企ては失敗に終わったと言えるかもしれません。

しかし、まだロシアもウクライナも負けていないという現実からは、戦争の遂行という観点では完全なる失敗には終わっていないとも言えます。少しこじつけにはなりますが、そのような見方も可能になってきます。

苦戦しつつも、ロシアと国境を接するウクライナ東部ドンバス地方(ロシアが一方的に併合した)におけるロシアの支配は広がっていますし、南部でも激戦が続いており、実際にはまだ負けていません。

ただ、ウクライナ軍による予想をはるかに超える抗戦と、欧米諸国とその仲間たちが挙ってウクライナへの軍事・人道支援に乗り出してウクライナの生存のための戦いを後押ししている状況とその威力については、ロシアおよびプーチン大統領は読み違いをしていたと言えることは失敗を意味すると思われます。

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