威光に翳りも。プーチンのウクライナ軍事侵攻は、結局「失敗」だったのか?

 

そして同床異夢ではあってもアメリカや欧州と対抗するための仲間として中国との関係が密接になり、国内では一度下がりかけたプーチン大統領の支持率が再び上昇したこと(大統領選を控えている身としては心強い)はもしかしたらプラス要因として評価されるのかもしれません。

ただ、今回のウクライナ侵攻ではっきりしたことは、めちゃくちゃ強いと思われていたロシア軍の脆さと、旧ソ連の国々でスタン系の国々がプーチン離れを起こそうとしており、プーチン大統領の威光に陰りが見えたことも確かです。この点は、プーチン帝国を建設し、大ロシア帝国の再興を願うプーチン大統領にとってはネガティブな要素でしょう。

今後、ウクライナに対する侵攻・攻撃が次のステージに上げられる際、プーチン大統領はこのネガティブイメージを払拭すべく、本格的な攻撃に出ることが予想されます。さすがにプーチン大統領が音頭を取った核兵器の使用の可能性はまだ低いと感じますが、ただ核のボタンを持つ3人衆の一人であり、面子を重んじるゲラシモフ統合参謀本部議長が総司令官も兼任することになったアレンジメントは、以前に比べて“通常兵器の延長線上のチョイス”としての戦術核兵器の使用に向けたハードルを少し下げたように思います。

プーチン大統領の失脚の可能性は考えづらく、そしてまだロシア軍には余力が十分にあるという分析をベースにした場合、今後カギを握るのは、「これからどれだけの期間、欧米諸国とその仲間たちはウクライナを支え続けることが出来るか」という点だと考えます。

負け切ってはいないが、まだ勝ってもいないこの状況下で、プーチン大統領はどのような次の手を打ち、欧米諸国とその仲間たちはどのように応じ、そしてゼレンスキー大統領はどのように立ち振る舞うのか?

まだまだ戦争は長期化し目が離せませんが、解決策・落としどころを探るのであれば、良いか悪いかという評価は外して、プーチン大統領がこのような行動に及んだ背景、各国のリーダーがとる行動の背後にある心理、そしてロシアからの攻撃を許してしまったウクライナとそのリーダーであるゼレンスキー大統領が直面する現実とそれに対する心理…。

これらを一度整理してみることが必要ではないかと考えます。

以上、国際情勢の裏側でした。

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