完璧なリスト作りは必要なし。プロが教える「タスク管理」本当の意義とは?

 

実際的なタスク管理において必要なのは、どう考えても後者でしょう。タスクをめちゃくちゃキレイに整理したけども、その構造の事ばかりが気になって実際のタスクが手につかないなどとなってしまえば「本末転倒」感が充満します。

私たちが「タスク管理」において目指すのは、前者のような効能です。つまり、自分の心・認知を整理することです。もう少し言えば、目の前と頭の中にある情報の整理を通すことで、自分の心を整理すること。それがタスクの整理の主要な役割であり、実際的なタスク管理において必要な営みでもあります。

■何かを「整理」すること

さて、ここで「整理」について考えましょう。梅棹忠夫は「整理」と「整頓」を分けて考えました。「整頓」は、ようするに“見かけだけ”の秩序であり、対象がどのような意味合いを持っているのかは気にしません。たとえば大きさが同じというだけで、未開封のダンボール、電子レンジ、ゴミ箱、旅行かばんを一緒に収納するような行為です。

一方で「整理」は、意味合いに注目します。冷蔵庫の中で、調味料は調味料でまとめ、飲み物は飲み物で収納し、足のはやい食材は先に買ったものを手前に並べる。これらは「どう使われるか」という機能に注目して秩序を作っています。

で、情報というものは“見かけ”を持たない存在なので、より一層「整理」の心構えが必要だ、というわけです。もし、物であれ情報であれ、うまく「整理」できているならば、使うときにさっと取り出せる状態が維持されているはずです。そこから逆算して、何かを収納するときはここに置いておけばいい、と計算もできるはずです。使用に基づいた秩序の効能です。

タスクにおいても同じことが言えるでしょう。行動に関する情報が必要になったとき、それがパッと取り出せるようになっていること。それがタスクが整理されている状態です。

デビット・アレンのGTDが提示した「コンテキストリスト」は、そうした状態の完全な体現と言えます。あるいはそれは「完全」を通り越して、「理想」とすら言えるかもしれません。「理想気体」と言うときの理想、つまり現実には存在しないものというニュアンスです。

複雑化した現代社会において、完璧なコンテキストリストを作ることはそもそも不可能です。また、事前には想定しえなかったコンテキストが突然生まれ、そこにタスクを放り込まなければならない状態もあるかもしれません。そんな状態ではとても完璧なコンテキストリストは作れないでしょう。

でも、それで別に構わないのです。

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