「退職勧奨を断れば給与を減額するぞ」と言われた社員が会社を訴えた結果

Fired Businesswoman Leaving Office With Her Belongings In Box
 

一応、念のためにお話しますと、退職勧奨を全否定はしませんが、決しておすすめしているわけではありません。ただ、どうしてもやらざるを得ないのであれば、しっかりやりましょうというのが今回のお話です(しっかりやりましょうというのもおかしな言い方ですが)。

そこで実務的には重要なポイントが3点あります。

まず退職勧奨の仕方です。

パワハラのような退職勧奨はもちろん論外ですが、1回あたりの退職勧奨の面談の時間が長かったり、回数が異常に多かったりすると当然ながら違法と見なされます。

また、本人が断っているのにしつこく退職勧奨することも避けるべきでしょう(今回の話に出ている研修も、社員から抗議を受けた後に途中で中止しています)。

回数も一般的には少ないほうが良いのは間違い無いです。ただ、例えば退職条件等で本人にとって有利な条件を毎回提案できるのであれば、回数が多かったからと言って必ずしも違法とも言えないでしょう。

ただ、時間の長さや回数は法律上決まりがあるわけではないためケースバイケースでの判断が必要になるところではあります。

2点目は減給の規定をしっかりと就業規則に記載し、実際に運用していることです。

以前にも書きましたがそもそも減給の規定が無かったり、あったとしても普段、運用が全くされていないといざというときに減給することができないケースが想定されます。

最後の3点目が客観的で適切な人事評価を行うことです。

今回の裁判のように「退職勧奨を断った後に減給された」というのは、通常はとても会社に不利に判断されることが多いです。「退職勧奨の報復に減給したのではないか」と疑われるからです。

にもかかわらず、今回の裁判で会社に有利に判断されたのは「(退職勧奨に対する報復ではなく)人事評価による減給」と認められたからです。

繰り返しになりますがくれぐれも退職勧奨をおすすめしているわけでは決してありません。ただ、もし万が一せざるを得ないのであれば安易な退職勧奨をしてトラブルになることは避けたいですね。

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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