今も昔もこれからも作業着イズム
実を言うと、この「切り口」に関してことさら丁寧に書いたのには理由があります。
この発表を受けて僕は、早速、会場内を回りながら疑問に思ったのです。どこへ行っても「Vivid」や「Tough」など、それで区分けされたコーナーが存在しない。
それで「さきほど、ステージで説明していた『ワークマンカラー』の『Vivid』はどこですか?」と聞いてしまった。それに対して、「いや、ないんですよ」と答えてくれたのがレディース製品企画の只野 沙弥華さん。
ええ?と叫ぶ僕。(笑)。つまり、商品単位で見れば、「Vivid」も「Tough」もない。普通に個々にバラバラで展示会で陳列されていて、それらはコーディネートによって初めて露見するのですと。なるほど!そうか「ワークマンカラー」はブランドではなく、「切り口」の提案であるとそこで初めて理解したわけです。
彼女の言葉が印象的で「今まで通りなんです。機能性重視のワークマンなんです」と。
それでこんなエピソードを話してくれました。作業着を買いにくるお客様が「作業のまま来るから、床を汚しちゃうから、きていいのかな?」などと言われたと。
スタッフとして店に入っていた彼女は何て言ったのか。
「何言ってるんですか。だから床を私たちはいつもきれいにして、お客様を待ってますよ」と。
ここに本質があります。ワークマンの本流である“ワークマン”を重んじるために、切り口を複数に分けるわけです。そこで入り口を分けることで、商品は同じだけど、気持ちよく買い物をしてもらいたいと。
商品は同じ。でも店ごとのフィルターが異なる
だから、何も変わらない。どこのお店に行こうが、彼らの提案する商品は手に入る。けれど、その店ごとにフィルターをかけて、色分けする事で、それぞれのユーザーが入りやすくしているに過ぎないのです。道標を作っているのです。
この話が深いのは生産の方針にも直結するからです。流行を目指すように思わせておいて、実は時期はずれの閑散期で商品を作ることで、コストを抑えています。
矛盾していると思ったんです。でも、それは違いますよね。標準的な商品を作っているのだけど、店ごとに感度を高めてコーディネート提案でその流行を抑えようというわけです。
であれば、流行りも安さも追求できます。なるほどねと。
だから、ファッションブランドになろうとしているわけではありません。機能性の幅が広がっただけのこと。作業着イズムの進化です。
これ以外にも「ワークマンプレミアム」など高価格帯の予定があることを明かしました。それだけ間口が広がる分、コアなお客様も同様にフォローしていくというわけです。手堅いですよね。
確かに、それであれば錚々たるファッションブランドを相手にその個性を発揮して対抗できますよね。だから、ファッションへの進出じゃないんです。
※ 本記事は有料メルマガ『週刊145マガジン「腹割って話そうぜ!」まぐまぐ!出張版』2023年2月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をご登録の上、2月分のバックナンバーをお求め下さい。
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