中国人の「人情味」
中国人は昔から「人情味」を重視する。言うまでもなく古代中国は礼節を重んじる国。伝統的な中国人の「人情」は、所謂君王と臣下、父と子、兄と弟、夫と妻、友人同士という5つの人間関係を呼んだ五倫(ごりん)の中にしかない。五倫は、儒教において主として孟子によって提唱された5つの道徳法則である。
ところで、中国人はとても人間的で温かいと言われるが、よく見ると、ある人の人間らしさ、温かさ、気遣い、愛情は、自分の子供、家族、親戚、友人といった小さな輪にしかない。他の人には、ほとんど無関心なのだ。大人の世界では、ビジネスと利益で人間を繋がる場合が多い。
そこで、「偽装人情」が生まれる。例えば、ビジネスパートナーを互いに兄や弟と呼び交わす。しかし、事業が失敗したり、争いが起きたりすると、「兄弟」になれないばかりか、友達にもなれないし、敵になるかもなれない。礼節を捨ててしまう。
欧米人が権利や義務を重視するのに対し、中国人は関係や友情を重視する。権利と義務、関係と友情のバランスをどうとるかは大事だ。権利と義務だけでは、冷淡で人間味に欠け、人間関係と友情だけでは、公平性が損なわれ、悪しき風習が生まれるかもしれない。
日本人の距離感と中国人の「人情味」から親と子の関係をくらべてみよう。中国の親は、子供が小さいときだけでなく、大きくなってからも心配しなければならない。さらに、親は、子どものパートナー探し、家の購入、結婚、出産を面倒しなくてはならない。経済的に余裕のない親は不安そうだ。
一方、日本人はこの点では中国人と比べたら、ずっと気楽ではないか。子どもたちは大学を卒業し、一人暮らしをする。彼らは恋をして結婚し、子どもを産み、親に手を差し伸べることはほとんどないだろう。
最後に一言、高齢者の一人暮らしなら中国より日本のほうがずっと便利だ。中国では、お年寄りが一人暮らしをしていると、惨めに見えると思われる。社会福祉が整っているとは言い難いためである。
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