すでに「日本の水」が危ない。警鐘を鳴らす“水環境の専門家”が明かした恐ろしい現状

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私は水環境の専門家として国連の環境審議官を経て、世界が直面する水の問題に長年取り組んできた。活動を通じて、日本の豊かな水環境は決して未来永劫盤石なものではないことを痛感すると共に、日本人が水の重要性に目覚め、一刻も早く「水ボケ」の状態から脱却しなければ、世界が直面する深刻な水問題に早晩呑み込まれてしまうという強い危機感を抱いている。

長年水に関わってきた専門家の立場で、まず世界がいま直面している水問題について記しておきたい。

一人の人間が一年間に使用する水は1,700立方メートルといわれ、それより少なくなれば水ストレス、つまり日常生活に不便を感じる状態に見舞われるといわれている。そして2030年には世界人口の半数、約40億人もの人が水ストレスに見舞われることが予測されている。

主な要因は、急速な人口増加と地球温暖化である。

過去100年の歴史を紐解くと、人口増加率の2倍の水が必要になることが明らかになっている。

現在80億人の人口がいまのペースで増え続け、1.25倍の百億人に膨れ上がった時、既に不足している水が現在の2.5倍も必要になる。

水不足に拍車をかけるのが、地球温暖化に伴う異常気象である。水資源というのは、必要な時に必要な量と質が手に入らなければ資源として活用できない。

ところが、近年は各地で旱魃が長期化して土地が干上がったり、逆に洪水を起こすほどの異常な豪雨が頻発し、水の安定供給が極めて困難になってきている。

また、かつて赤道近辺の海水は太陽の熱によって温められ、蒸発して雲になり、温帯地域に雨をもたらしていた。

しかし、地球温暖化で過剰に温められるようになった海水は、カナダやロシアといった高緯度地域に大量の雨や豪雪をもたらすようになっている。

これらの地域では、大量の降雨を想定した水インフラが十分整っておらず、またその治水技術にも乏しいため、深刻な水害リスクが高まっている。

その一方で、これまで豊富な雨量の恩恵を受けていた温帯地域は、十分な降雨に恵まれなくなり、世界における水の偏在が急速に進みつつある。

もちろん日本も例外ではない。

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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