表面上だけ改善した日韓関係とサウジ-イラン「和解」。その違いは何か?

 

アメリカが日韓関係を取り持とうとするのは、中国をにらんでのことだ。その中国は全国人民代表大会の期間中に驚くべき仲裁をやってのけた。宿敵であり、イエメンやシリアでは代理戦争さえ行ってきたサウジアラビアとイランの仲介だ。2016年から断交を続けてきた両国を国交回復へと向かわせたのである。

この中国の外交を当局者は一様に「中国の『グローバル安全保障イニシアティブ』の勝利」と繰り返した。グローバル安全保障イニシアティブとは2022年4月21日、ボアオ・アジアフォーラム年次総会の開幕式で習近平国家主席が打ち出し、以来ずっと中国の重要な外交の場面で繰り返されているキーワードだ。

実は、ウクライナ戦争の平和解決のため、中国は『ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場』を打ち出し、話題を呼んだが、このときも同時に出されたのが「グローバル安全保障イニシアティブ・コンセプトペーパー」だった。

グローバル安全保障イニシアティブが何を指しているのか。中国の今後の外交の肝になるので項を改めて触れてゆきたいと思うが、今号では中国が仲介したサウジアラビア・イランと日韓の関係改善の違いについて焦点を当ててゆきたい。

両者の決定的な違いは、まず日韓が対北朝鮮やインド太平洋を強調していることでもわかるように安全保障を意識したものだということだ。これに対しサウジアラビアとイランの国交回復は、そのベースを経済発展に置いている点が明らかに違うのだ。

欧米からの厳しい制裁に晒されてきたイラン経済は国内のデモなどでさらにダメージを深めていた。一方のサウジアラビアは脱石油を掲げ、次の展開を模索しなければならないという事情があった。サウジアラビアは脱エネルギーを視野に、日本に秋波を送っていた時期もあったが、ここにきて対米関係の悪化もあり、中国に大きく傾斜したと考えられる。

これに関し中国中央テレビ(CCTV)のニュース番組『今日亜州』は16日、興味深い切り口で両国の結びつきを扱っている。中国の対中東諸国向けの輸出がここにきて急増したというのだ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年3月19日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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