昨年までは伸び続ける一方だった中国の自動車販売数が2023年になって一転、1月から3月半ばまでの累計数が前年比19%減となるなど、深刻な状況となっています。何がこのような局面を引き起こしたのでしょうか。日刊で中国の自動車業界情報を届けてくださるメルマガ『CHINA CASE』では今回、かような異常事態を招いたと中国の業界団体が批判する武漢市等の政策を紹介。さらに同国自動車市場の今後の見込みを考察しています。
熾烈な価格引き下げ競争も、中国で「車が売れない」一体何が?
中国で自動車が売れなくなっている。2023年1~2月の前年比マイナス成長に加え、2023年3月1~12日の販売台数は前年比17%減の41.4万台、2023年1月1日~3月12日の累計販売台数は同19%減の309.4万台に止まっている。
3月に入り、メーカー、販売店が大幅な値下げを行っているにもかかわらず、この状況は深刻。その震源地となった湖北省武漢市の対応を、メーカーや販売店を会員とする業界団体、中国自動車流通協会が異例の批判を行っている。
協会の異例な批判内容
武漢市やその個別の行政区は2023年3月1日から、地元企業である東風集団系の地元製造ブランド車種に限り、最大9万元(約172万円)の値下げ、その補助金交付を発表した。もう一台自動車が買えてしまう値下げ額に、中国全土で激震が走り、それに追随する動きも各所で見られるようになった。
中国自動車流通協会は、「メーカーが在庫処分のための値下げ販促を行うこと自体、普通に見られる行為だし、政府が自動車消費を奨励すること自体、正しい方向だ。ただし、今回の武漢の事例は、補助金を現地メーカーだけにとどめた。この方法自体が議論を呼んでおり、下記のように一連の問題を引き起こす可能性が高い」として三点、挙げている。
- 現地製造メーカーのみを対象としたことは、明らかに地方保護色が強く、他メーカーの販売に悪影響がある
- この措置により、多くの消費者がまだ値下がるのではないか、と、自動車の買い控えに動いた。販促とは真反対の効果となった
- 各政府が武漢を真似た政策を取り始めている。中央政府が掲げる「全国統一一大市場」形成の前提が崩れる
今後の見込み
中国自動車流通協会は多くの会員からの照会、問い合わせが殺到している状況であり、同協会としては関連の政府部門に対して働きかけを行っている最中であり、現在までに関連部門はこの問題を重視、積極的に回答してきている、としている。
4月は前年に上海ロックダウンがあったため、前年比は見かけ上急成長を果たすことになるが、2023年7月に迫った排ガス規制「国六B」移行もあり、中国自動車市場は混乱の度合いを強めている。
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