ChatGPTの普及でキャバクラ消滅?Windows生みの親・中島聡が「AIとオタク文化の融合が日本を救う」と考えるワケ

 

聞く側が賢くないと、ChatGPTは使いこなせない

──ChatGPTを中島さんご自身はどのように活用していますか?

ChatGPT3から4では驚くべき進化を遂げています。職業によっては人間よりもChatGPT4の方が優れているのでは?とすら思います。たとえば、特許を取る作業などは、ChatGPT4に書類を作ってもらって、私はサインするだけということにしています。そういった書面を作る作業は、もうChatGPTに任せられるレベルにあります。

また、言いたいことをわかりやすく解説し、直してもらうことにとても役に立ちますね。先日、あるアルゴリズムをZoomを使って言葉で説明しようとしたのですが、うまく理解してもらえないということがありました。そこで、そのアルゴリズムをうまく説明するための相談をChatGPTにしてみました。アルゴリズムの説明を文章化するときにChatGPT4に投げかけて、理解してもらって、その上でお前が文章書けよと言うと、キッチリとした文章を書いてくれます。

ここから分かることは、ChatGPTは創造性はそんなにないが、理解力は凄い。きちんと説明できれば、それを整理整頓して分かりやすくまとめてくれるという能力が高い。論文にするとか、特許申請するということが得意なんです。漠然とした質問には、ありきたりの答えや、時には間違った答えが返ってきます。しかし、正確なデータを与えれば、的確な答えが返ってくるんです。

ブレスト(brainstorming)相手としても有効に活用できますね。人と会話するときは、こちらの意図が相手に伝わっているかどうか、相手の反応を見ながら普通は対話をするじゃないですか。人間が相手の場合は、相手の理解力によっては、8出しても3しか理解してくれないことがありますが、ChatGPTならば、8出したら8伝わる。素直に理解してくれるので、作業の速度と精度が上がります。

新人教育の機会を奪うChatGPT

──もはやChatGPTがない世界は考えられなくなりそうですね。

複雑な計算するのに電卓を使わないのがナンセンスのように、論文を書く、特許申請書を書く、アルゴリズムを説明するといったようなときに、ChatGPTが必要不可欠になると思います。教育ではChatGPTが今問題になっていますが、ChatGPTを大学で学生に使わせないというのはおかしい。これからは論文を書くときに、ChatGPTを使うのを前提に、出題する側が考える必要があります。

たとえば、英語の課題を評価するときに、昔ならスペルミスで減点ということがありましたが、これからはそこに盛り込まれたアイデアや内容で評価されるようになるでしょう。何かについて調べるという課題ではなく、生徒のクリエイティビティが発揮できる課題作りが求められるわけですね。

今やプログラミングもChatGPTに書かせるプログラマーもいますが、こうなると新人のエンジニアに求められるスキルが高くなる可能性があります。ChatGPTが書いたプログラムが正しいかどうかを判断するスキルが求められてくるからです。それに全部のプログラムをChatGPTに書かせればいいかと言えば、そうでもないと僕は思います。

でも、ChatGPTが誤っているのかどうかが判断できるレベルまで、どのタイミングでエンジニアは学ぶことができるのかという問題があります。社会の階段を登るのが難しくなってくるんです。これまではエンジニアは新卒で採用されると、つまらない仕事を最初はやらされます。いわゆる下積み時代ですね。この作業をChatGPTがやってしまうと、若い人の仕事はなくなります。新人なのに、ある時、突然「お前ChatGPTを使ってプログラム書け」と言われる。すると出てきたプログラムがいいのか悪いのかを判断できない。そんな新人が出てくるのが心配です。まあ、そうなれば、そんな新人を教育するためのChatGPTのプロンプトが出てくるのかもしれませんが。

AIならば完全犯罪も可能。各国が規制に走る理由

──このように進化するAIに対して各国で規制すべき、という考え方が出てきています。中島さんはどのようにお考えですか?

AIの普及を止めることは誰にもできません。でも、政府が何らかの規制を加えなければカオス状態になってしまいます。まず、日本政府は有識者会議を開いて、AIの問題点について検討することです。問題点を洗い出したら、政府としてそれにどう対処するか。開発している会社に対して何らかの規制をする必要があるのかを検討すべきです。失業者が増える可能性があるだけならば、規制の必要はありません。でも、たとえばChatGPTに「毒殺と分からないように人を殺すための薬を市販薬だけで作るにはどうしたらいいか?」という質問に答えられては困るわけです。このようなことも、現在はあくまで自主規制に頼っているだけなんです。

インターネットが誕生したときも核爆弾の作り方が公開されたり、3Dプリンターが出来たときには拳銃が作れるようになったりと問題は起こりましたが、同様の危険性がAIには潜んでいます。

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