自滅した高市、世耕、西村。地方選と補選でポスト岸田を狙う面々の手痛い「敗戦」

Tokyo,,Japan,-,7,September,2021?exterior,Of,Liberal,Democratic,Party
 

4月9日と23日に行われた統一地方選と衆参両院の補選。日本維新の会の躍進ぶりが目についた選挙となりましたが、手痛い「黒星」を喫した自民党内の実力者もいたようです。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、一連の選挙で「自滅」したポスト岸田の座を狙う3名の議員たちの、敗戦までの過程を紹介。さらに一連の選挙で露呈した、自民党の抱える深刻な問題について解説しています。

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実力者たちが次々自滅。地方選と補選で露呈した自民が抱える深刻な問題

統一地方選と5つの衆参補欠選挙が終わって、何がどうなったかと問われたら、関西圏における日本維新の会の勢力拡大がやたら目立ったと答えるほかないだろう。

自民党は衆参補選で4勝1敗だと言っても、衆院千葉5区、山口2区、参院大分は僅少差で、時の運しだいでは1勝4敗もありえたほどの大接戦だった。

そんななかで、筆者が関心を向けたのは、地元で候補者を擁立したすえに“敗者”となった自民党実力者たちの姿だ。いずれもポスト岸田を虎視眈々と狙う面々だけに、権力レースのうえで痛い黒星といえる。

自民党参議院幹事長の世耕弘成氏は和歌山1区に元衆院議員、門博文氏を擁立し、維新の新人、林佑美氏に敗れた。

周知の通り、世耕氏は安倍派に所属し、安倍晋三元首相が亡くなって10か月近く経ってもなお決まっていない後継会長の有力候補の一人である。

その地元・和歌山の衆議院1区で補欠選挙が行われることになったのは、2009年以来5回にわたって議席を獲得していた岸本周平議員(当時・国民民主党)が昨年11月の和歌山県知事選に出馬したからだ。

空いた議席をめぐる自民党和歌山県連の候補者選びは難航をきわめた。県連の最高権力者である二階俊博元幹事長は当初、直系の参院議員、鶴保庸介氏をくら替え出馬させる案をまとめようとしたが、世耕氏が横やりを入れた。

岸本知事の誕生を後押ししたのも二階なら、鶴保氏の参院から衆院へのくら替えを主導するのも二階という県連の権力構造を打破したかったからだろう。

世耕氏自身が総理の座をめざすため、衆院にくら替えするチャンスをうかがっている。だが、近いうちに衆院解散が予想されるなか、今回の補選には出たくなかったに違いない。

狙うとすれば解散後の総選挙だが、昨年11月28日に公布された改正公職選挙法により、「10増10減」の新区割りが適用され、和歌山の衆院小選挙区は3から2に減ることになっている。ただでさえ狭くなる門に、参院から割り込むのはかなりの荒業だ。

そこで世耕氏にとって重要なのは、県連における二階氏の主導権を奪い取ることだった。鶴保氏に替わる候補者として世耕氏が推した門博文氏もまた二階派ではあるが、なにより世耕氏の人選が通る形をつくることが大切だった。

もちろん、推す候補者が負けては話にならない。門氏で勝てると踏んで後押ししたのだが、党勢拡大をはかる維新が和歌山まで進出し、保守王国の牙城を崩すとは想像も及ばなかったに違いない。

門氏の落選が確実になったあと、二階氏は集まった支援者になにも語ることなく、選挙事務所を後にした。

世耕氏は「和歌山選出の議員として地元を落としてしまい申し訳なく思っている。かつてないほどの運動を展開したつもりだが…」と悔しさをにじませた。

二人の姿が全てを物語っていた。世耕氏が責任を引き受けた瞬間だった。

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