プーチン激怒。クレムリン無人ドローン攻撃を仕掛けた“実行犯”の正体

 

何一つ無い「ウクライナを利するもの」

ただ、仮にこれがウクライナによる攻撃だったとした場合、不可解な点がいくつか挙げられます。

1つは「近々、本格的な対ロ反転攻勢を実施する」と言われている直前に、あえてプーチン大統領とロシア政府を刺激する行動を取るかという疑問点です。

先に挙げたように、これが実は反転攻勢のスタートピストルという位置づけであれば、予想されるロシアによる報復攻撃を受けて、一気に攻撃の本格化に移行するものと思われますが、ロシア政府とプーチン大統領が非常に重要視する5月9日の対独戦勝記念日のパレード前に攻撃・反攻の狼煙を挙げることは、完全にプーチン大統領にケンカを売る行動とされ(意図的にそう理解され)、ロシアによるウクライナ攻撃のレベルを数段階エスカレートさせることにつながることになります。

私はまだロシアによる対ウクライナ核攻撃はないと見ていますが、メドベージェフ氏を含む過激派の声が再度ロシア政府内で大きくなり、それがプーチン大統領の支持基盤への影響に繋がる場合は、そのような過激な決定に走る可能性も否定しきれないように思います。

2つ目はすでにお話ししている通り、今回の攻撃によって何かウクライナを利するものがあるかどうかという疑問です。

結論から申し上げますと「ない」と思われますが、もしゼレンスキー大統領と政府がウクライナ軍全体の統率を取れていないか、正規軍ではない義勇軍的な組織による実施だった場合、“ウクライナによる実行”という可能性を100%否定できなくなる事態に陥ります。

今回の報を受けてアメリカのブリンケン国務長官は「現時点では判断できず、まずしっかりと事実究明をする必要があるが、何が真実化を探る手立てはない」と少し通常より距離感のある反応を示していますが、これは「仮にウクライナによる仕業だった場合に、アメリカの関与を否定するための逃げ道を保っているもの」と考えられます。

「ロシア政府による自作自演説」への疑問

では2つ目の可能性である【ロシア政府による自作自演】はどうでしょうか。

自作自演については、これまでロシア政府・プーチン大統領が用いる常套手段ですので十分にその可能性はあると考えます。

ただ引っかかるのが、先ほども挙げた【5月9日の対独戦勝記念日パレード】の存在です。

実際に今回攻撃を受けたクレムリンが位置する赤の広場周辺は厳戒警備体制が敷かれており、普段からドローン飛行禁止区域に指定されている場所でもあり、防空体制も敷かれているはずですので、クレムリンへのドローン攻撃という失態をあえて自作自演であっても犯すかどうかといわれると疑問です。

「ウクライナからの攻撃に備えてモスクワはもちろん、ロシア各地の防衛体制は万全だ」とロシア国民に訴えかけ、安心するように演出しているわけですから、それを覆し、下手するとロシア政府とプーチン大統領の体制の弱体化をイメージづけかねない事態になる危険性を冒してまであえて自作自演で行うかは疑問です。

ただ、ここ最近、対ウクライナ戦争に対する国民の関心が薄れていることも事実のようで、近々起こるウクライナによる本格的な反転攻勢を迎え撃つために、国威の再掲揚はマストで、かつ今後、全土厳戒態勢を敷き、ウクライナとの本格戦争を“アメリカと欧州各国の企みを挫く”という名目の下に実施する方向に持って行きたいという思惑があると言われているため、国内の引き締めと国民の対ウクライナ戦争への支持取り付け、そして政府内で大きくなりつつあるという“反プーチン勢力”の鎮静化(もしくは抹殺)、そして“対ウクライナ特別作戦”の行き詰まり感を打破するための攻撃レベルUPの口実作りという、いろいろな観点から、自作自演の可能性は否定できないとも考えています。

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