プーチン激怒。クレムリン無人ドローン攻撃を仕掛けた“実行犯”の正体

 

捨てきれぬ「意外な勢力からのメッセージ」の可能性

そして“番外編”は【ワグネルによるロシア政府へのメッセージ】という可能性です。

昨今、ロシア軍・国防相とワグネルとの確執が報じられていますが、プリコジン氏が腰の重いロシア政府とプーチン大統領に対して、「このままだと本当にワグネルは撤退するぞ」という脅しを投げかけたのが、今回のドローン攻撃だったのではないかとの見解です。

あくまでも想像の域は出ないのですが、そうであれば、あえてクレムリンに激突させなかった理由も見えてくるような気もします。

事実は実行犯と指示した者にしか分かりませんが、今回のサプライズは今後のロシア・ウクライナ戦争の戦況と見通しに少なからず影響を与えそうです。

ロシア議会の過激派がいきり立つ“核兵器使用”については、ロシア存続というゴールがある限りはないと思われますし、プーチン大統領とその周辺もNATOをフルに巻き込む事態は避けたいと思われるため、限りなく可能性は低いと考えていますが、プーチン大統領が考えることはいつも謎めいているため、“ない”とは言い切れません。

また「ゼレンスキー大統領の暗殺」や「大統領公邸への攻撃」なども可能性として挙げられていますが、こちらも未知数です。

ただ確実に起こることは、ここ数日中に(でも5月9日までに)ロシアによる大規模な対ウクライナ報復が行われることで、標的の一つにキーウが入っていることだと考えます。

激化する各国諜報機関による情報戦の現実

今回のドローン攻撃前には、クリミア半島の石油備蓄施設が何者かによって爆破され、2万トンを超える燃料が失われた事件が起こっており、プーチン大統領はすでにそれに対する報復にもGOサインを出していると言われているため、今回のドローン攻撃への報復と合わせて、かなり激しい報復を加えるものと思われます。

それはロシア国民への強いメッセージとなるでしょうし、ロシアの戦力に関して情報提供を続ける欧米の情報機関への挑戦状とも受け取れるかもしれません。

今回のドローン攻撃、そして先日のクリミア半島での爆発を前に、様々な角度から情報戦が繰り広げられていました。

アメリカの欧州部隊の司令官は、連邦議会で「ウクライナの戦力及び能力については、いくばくか計算違いはあるものの、十分に対ロ反転攻勢をかけ、成功できるレベルにある」と述べるとともに「ロシアの戦力はまだウクライナに対して優位に達しており、戦場がウクライナの“外”に広がった場合には、NATO加盟国にもその戦火が広がる可能性は否めない」という発言を行っています。

これは、ロシア向けではないですが、戦争の長期化から支援疲れとウクライナ支援の停止を口にする勢力に釘をさす目的があったと思われ、ロシアの戦力に関する分析内容には、若干の誇張があるように感じています。

ウクライナ政府のポドリヤック大統領府顧問やNATOのストルテンベルグ事務総長が言うように「ウクライナによる本格的な反転攻勢の時期や中身について変更はなく、加盟国から供与された戦車部隊と航空部隊もすでに臨戦態勢に置かれている」という内容は、NATO各国へのメッセージとともに、ロシアに向けたメッセージとも受け取ることが出来、ロシア軍側を臨戦態勢に置かせるように仕向けることで、心理的な疲労を増大させたい狙いも見て取ることができます。

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