ロシアの状況
クレムリンの時計塔(スパスカヤ塔)に対して、ドローン2機の攻撃があったが、1機目は3日午前2時27分ごろ、クレムリン内にあるロシア大統領府の建物のちょうど真上で無力化された。
1機目の残骸はドーム状の屋根に落ち、燃え広がったようだ。2機目はその16分後の午前2時43分ごろ、同様に大統領府の丸いドーム上の屋根部分で爆発した。
しかし、クレムリン周辺はドローンの攻撃を避けるためにGPSの誤情報を送信する「スプーフィング」が行われているが、2機のドローンは、GPSを使わないで飛んできたことになる。近くから飛ばさないとクレムリンに正確に行かない。
このため、ドローン攻撃について、米国のドローン専門家はドローンは、国外から飛来したのではなく、ロシア国内で発射された公算が大きいとした。
ということは、国内の反政府勢力か自作自演の2つが考えられることになる。
このクレムリンへの攻撃で5月9日の軍事パレードが中止になれば、自作自演という線が濃厚になるが、それもないようだ。すでに、ロシア当局は、21都市で祝賀パレードの中止を表明している。
しかし、5月9日の軍事パレードのリハーサル映像では、例年の3分の1から4分の1の規模で、T34戦車だけは用意しているともいう。しかし、中止ではないようだ。自作自演という線は無理がありそうだ。
ロ大統領府は、クレムリンへのドローン攻撃をウクライナによる「テロ」と一方的に主張し、報復措置を講じると警告。ロ国内で強硬論が勢いづく中、メドベージェフは、報復として、ウクライナのゼレンスキー大統領の「物理的な排除」を要求し、ペスコフ広報官は「米国が攻撃の背後にいる」と主張した。そして、ロ下院議長は、ウクライナ政権中枢に向けた戦術核の使用を促す極論をSNSで提案したが、プーチンの判断が焦点となる。
ペスコフ広報官の言葉に対して、カービー戦略広報調整官は、クレムリンへのドローン攻撃について、米国はいかなる形でも関与していないと反論した。
元ロシア国会議員のイリヤ・ポノマリョフ氏は、クレムリンへのドローン攻撃について、ロシア国内で抵抗運動を行うパルチザンが実行したとの見方を示した。
この報復として、4日にロシアが迎撃不可能とした極超音速のkh-47M2キンジャール・ミサイルをキーウに向けて発射したが、キーウの手前でパトリオット防空ミサイルで迎撃された。メドベージェフがいうゼレンスキー大統領の物理的排除はできないようである。
この早期警戒システムはイスラエルからの供与品であり、それに連動したパトリオット・ミサイルで撃ち落したことになる。
ウ軍は、トクマクやメリトポリなどの後方拠点を一貫して攻撃し続けているが、ロ軍は、電子ジャマーを使ってHIMARSシステムのGPS照準機構を無効化し、ミサイルが目標を外れるようにしたようである。
この対応として、ウ軍は航空攻撃で、電子線装置の破壊を優先している。米国もウ軍の敵信号妨害探知を支援して、衛星からの情報で、位置を割り出してウ軍航空部隊に情報を渡している。
もう1つの対応策として、ウ軍は、ドローンで後方の燃料タンクを狙い始めた。
ロシアとしては、ウ軍がいずれ攻勢限界に達した後で、反撃に転じる意図を示唆したいようである。
しかし、米ヘインズ国家情報長官は、「ロ軍は深刻な弾薬不足に直面し、人員的にも大きな制約が生じている。ウ軍の反撃が完全に成功しないとしてもロシア側が今年、大規模な攻撃作戦を展開することはできないでしょう」という。ロシアの兵站崩壊で、戦争の状況は転換した可能性があるようだ。
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