プーチンが密かに企む“大ロシア帝国復興”と戦争長期化による周辺国の政情不安

 

中東やアフリカで増す中国の存在感

2つ目は【中東・アフリカ地域の再編が中ロを軸に進められていること】です。

サウジアラビア王国とイランの関係修復や、スーダン内戦の仲裁、Horn of Africaの不安定要素の除去へのコミットメントなど、今年に入ってからの中国による仲介が非常に目立ち、中東各国もアフリカ諸国(主に東アフリカと北アフリカ諸国)における中国のプレゼンスが非常に高まっています。

25年単位の戦略的パートナシップ締結を各国と行いつつ、外交的なサポートを各国から得るというスタイルは、欧米型民主主義の押し付けに反感を抱く国々には都合がよいようで、緩やかな協力というコンセプトの下、中国とロシアが主導する国家資本主義陣営の勢力圏が広がっています。

そして今週に入って明らかになってきた驚きのニュースが、中国によるイスラエル・パレスチナ問題へのコミットメントです。

これまで中国政府は意図的にイスラエル・パレスチナ問題に関与することを避けてきましたが、アッバス議長の訪中を受け、習近平国家主席自らが仲裁に乗り出す旨、公言しました。

この際「将来的に2つの独立国家が併存する形式での和平をサポートする」と習近平国家主席が述べたことは、中国政府のアラブ諸国への気遣いと受け取ることが出来ます。

イスラエル政府と中国政府の関係は決して悪くはないようですが、イスラエルにあからさまに肩入れしてきた米国政府の方針に真っ向から対立する意向を鮮明にすることで、中国の中東地域・地中海地域における立ち位置を明らかにしたと思われます。

同時に決してイスラエルの存在を否定することはしない点では、アラブ諸国の立場とは一線を画し、域外の超大国(でも中国はアラブ諸国を西アジアと位置付けて、アジアの仲間と定義している)としてtoo muchなコミットメントは避けるという意図も見え隠れします。

イスラエルともアラブ諸国とも経済的な結びつきを強めつつ、国際的にこれまで解決不可能とされてきた諸問題に中国が関与し、不可能を可能にしていくことで、じわじわと外交的な影響力も伸長させようとしている意図が見えてきます。

グローバルサウスの取り込みに失敗したG7

そしてこの姿勢は3つ目の動きである【グローバルサウスとの同調】のための動きにもつながってきます。

インド、インドネシア、南アフリカ、ブラジルなどに代表されるグローバルサウスの国々は、欧米型の支配形式からも、伸長する中国の脅威と影響力からも距離を置き、それぞれの利害に基づいて2大勢力圏との間でバランスを取るという方針を取ってきました。

ただ、勢力の維持または拡大を狙うG7は、広島サミットの一つの重要議題として「グローバルサウスとの協働」を掲げて、インド、インドネシア、ブラジルなどを招待して取り込みを画策しましたが、各国の反応を見ると、その試みは失敗に終わったようです。

もちろん、G7諸国とのつながりは、それぞれの国の利害に絡むことですので、真っ向から反対することはしないでしょうが、取り込まれることもなかったようです。

中国については、当初、グローバルサウスの国々、特にインドからの強い警戒心の対象となってきましたが、先に挙げた国際的な紛争へのコミットメントと仲介の姿を通じて、次第に警戒度を下げ、中国との協働を模索する方針に変わってきています。

あからさまに中国とロシアの側につくことはないでしょうが、拡大する経済的な結びつきからの利益や、欧米からの押し付けへの対抗策として、グローバルサウスの国々と中国との距離感は狭まってきているように見えています。

実際に台湾情勢については、中国と台湾による武力衝突が起こらないという大前提があるものの、グローバルサウスの国々は「域外の国があれこれ口出しをするべきではない(インド)」や「各国の事情や利害などを尊重すべき(インドネシア)」といった、半ば中国寄りともとれる発言が目立つようになってきています(あまり報じられていませんが)。

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