「退職届の日付を書いてないから撤回する」社員の言い分は通るのか?

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会社が勝ちました。

その理由は以下の通りです。

・(この社員が)退職の意思を撤回するかのような言動があったとしても、その時点では、すでに会社は退職を承諾し、しかもその承諾の意思表示が(この社員に)到達していた
・よってこの労働契約は既に合意解約によって終了したと認めることができる

一言で言うと「すでに(退職を)承諾しちゃったから撤回は無理」ということですね。

ここで実務的に注意すべきポイントが2点あります。

1点目は「退職に対する承諾」についてです。

退職を撤回できるかどうかではたくさんの裁判例がありますが、承諾前であれば「撤回できる」とされる場合が多いです。

また、その前にそもそも承諾が必要かという論点もあります。

よく言われるのが、退職届と退職願の違いです。

・退職届→承諾は不要退職届とは退職の意思を伝えるものなので提出時点で退職が成立するため不要
・退職願→承諾は必要退職願とは退職を会社に願い出るものなので会社の承諾が必要

ただ、実務的には、題名が退職届となっていても文章の内容が退職願のようになっているものもありますし、その逆もありますので一概にどちらとも言えないでしょう。

また、会社のフォーマットが退職届の内容になっていたら、すべて承諾は不要になってしまい、場合によっては社員にとって不利にもなることもあります。

よって、どのような内容であっても万が一の場合を考えると必ず承諾を出しておいたほうが良いでしょう。

2点目が「承諾を出すスピード」です。

今回の裁判例では撤回するより承諾が早かったことが会社に有利に判断されました。

これは非常に重要なポイントです。このようなケースではとにかくスピードが求められます。

この裁判例でも直属の上司が出張中だったためさらにその上の統括する上長からサインをもらうなどしています。

ここでもし「上司が出張から帰ってきたらサインをもらおう」なんて考えていたら間に合わなかった可能性もあります。

これも実務的には非常に大切なポイントですね。

退職届の提出日の翌日に退職を撤回、なんてことは普通に起こり得るからです。

そうなってから「昨日、承諾を出しておけば…」と言っても、すでに遅いのです。

退職は「承諾」と「スピード」を意識しておきたいですね。

image by: Shuttetstock.com

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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