日本に暮らしている人には理解しにくい現象だと思いますが、その背景には、米国社会にある大きな分断があります。
日本にも伝わっている、
- 性的マイノリティを差別してはいけない
- 人種差別をしてはいけない
- 難民を受け入れるのは先進国の役割
- 地球温暖化を止めるためには、EVシフトも含めて積極的にライフスタイルを変えるべき
- セクハラ・パワハラをする人を許してはならない
などの、いわゆる米国の「political correctness」は、実際には、西海岸・東海岸に暮らす、学歴が高くて恵まれた生活を送っているリベラル層の意見でしかありません。しかし、それらは「正論」であるが故に、メディアにも多く取り上げられるし、あたかも「米国の大半の人がそう考えている」ようなイメージが作られ、反対意見を声高に語りにくい風潮が作られてしまっています。
結果として、保守層の人々は、彼らの意見が「封じ込まれている」と感じているし、「メディアはリベラル層によって操られている」と感じているのです。
今回は、そんな彼らの不満の捌け口として、Bud Lightへの攻撃が起こってしまったのです。してはいけないとされている、性的マイノリティに対する差別発言の代わりに、トランスジェンダーの俳優を広告に起用したBud Lightへの不買運動が起こったのです。
今回の件は、消費者向けのビジネスをしているすべての会社にとって、良い反面教師になっただろうと思います。会社として「political correctness」を追求することは重要ですが、その動きに不満を持っている保守層を刺激するようなことは、可能な限り避けなければならないということです。右に傾き過ぎれば、メディアから叩かれるし、左に傾き過ぎれば、Anheuser-Buschのような目に会うのです。
ちなみに、2016年の大統領選に勝って45人目の米国の大統領になった、ドナルド・トランプ氏は、まさにこの「リベラル層のpolitical correctnessに虐げられていると感じている保守層」の心を上手に掴むことにより選挙に勝つことに成功しました。
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