茂木幹事長がメンツをかけ党内外に見せつけた荒療治
統一地方選の後、府連の宗清皇一会長は選挙結果の責任を取り、辞任届を提出するとともに、府連の立て直しを党本部に依頼した。そのころ、宗清氏はメディアにこう語っている。
「大阪府連変わらなあかんよ、と言うなら自分自身が変わらないと。じゃあ、あなたはどれぐらい努力したんですか。組織のために。誰が会長であっても支えないとね。今はそうなってない。なってないね」
府連のなかで対立と責任のなすり合いがあったことがうかがえる。会長としてはどうしようもなかったのであろう。こうなると、「国政のことしか考えていない」と不満を抱きながらも、党本部に頼っていかざるを得ない。
自民党は茂木幹事長をトップとする「大阪自民党刷新本部」を立ち上げた。大阪府連に手を突っ込む以上、茂木幹事長はメンツにかけて、なんらかの荒療治を党内外に見せつける必要があった。それが、大阪における小選挙区支部長の公募だったのではないだろうか。
だが、中山氏らにはどうしても納得がいかないことがある。彼ら6人はすでに次期衆院選に向けて活動している支部長でありながら、その選挙区で新たに支部長候補を募集され、公認されるかどうか不安定な立場になっている。ところが、公募の対象となっていない選挙区の支部長、つまり公認が確定的な支部長が5人いるのである。
1区:大西宏幸▽2区:左藤章▽7区:渡嘉敷奈緒美▽13区:宗清皇一▽19区:谷川とむ。この5氏だ。
中山氏らとの差はどこにあるのか。5人とも中山氏らと同様、21年衆院選で維新候補に大差で敗れた。宗清氏と谷川氏は比例で復活し、現職の衆院議員であるからまだしも、あとの3氏については、どういう基準で選びなおしを免れたのか、きわめて不透明であり、疑念を呼んでいる。
疑念には、もちろん理由がある。大西氏と左藤氏は岸田派、渡嘉敷氏は茂木派であることだ。ちなみに、選びなおしの対象となった中山氏は安倍派であり、佐藤氏と岡下氏は二階派である。高麗氏、北川氏、加納氏に国会議員歴はない。
明らかに、総裁派閥、幹事長派閥が優遇されている。候補者の公認争いが、権力の縮図となるのはあたりまえとしても、露骨なものである。
大阪の19の小選挙区のうち、公明党が候補者を立てる4選挙区と支部長が確定した5選挙区を除く10選挙区が、今回、支部長公募の対象となった。中山氏ら現職支部長のいる6選挙区と、支部長が決まっていなかったとされる9区、10区、14区、18区の4選挙区だ。
さて、この決定に納得できない中山氏ら6人は7月4日、党本部を訪れ、茂木幹事長と森山選対委員長に直談判した。しかし、茂木幹事長らは情勢調査などを踏まえ総合的に判断したと言って、譲らない。それなら判断データを開示してほしいと訴えても、かなわなかった。
中山氏は「ブラックボックスの中で公募が決まった」と憤りを隠さない。「私より惜敗率が下回る左藤氏とか、大西氏が対象にならないのはなぜのか。非常に理解に苦しむ、合点がいかない」
もちろん、過去の選挙で何度か当選したからといって、それが既得権になるのはおかしい。公認が得られなければ立候補できないわけでもない。党が、清新な人材を集めること自体は、いいことである。だが、それならいっそのこと、現職支部長がいようといまいと、すべての選挙区で公募をしたらどうなのだろうか。
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