安倍派を露骨に冷遇。自民党が大阪で見せた「対維新工作」の酷い仕打ち

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あくまで一時的なものと見られてきた、関西における維新の会の人気。しかしその勢いは増す一方で、もはや大阪では自民党を凌ぐ存在となっています。もちろん自民とて手をこまねいて見ているわけではありません。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、党本部が立ち上げた「大阪自民党刷新本部」の取り組みを紹介。さらに本部長を務める茂木幹事長の「狙い」を考察しています。

尽きた安倍氏の威光。衆院選公認争いで自民が露骨な安倍派降ろし

テレビのニュースで、この人の顔を見るのは久しぶりだった気がする。中山泰秀氏のことだ。

外務副大臣だった2015年にはしばしばメディアに登場した。イスラム過激派組織「ISIL」に日本人2人が拘束、殺害された事件でヨルダンに現地対策本部長として派遣されたときは、連日、カメラに追われていた。結果として、助け出すことができず、右往左往するばかりと批判を浴びもしたが、世襲のお坊ちゃん政治家にはまだ未来が輝いているかに見えた。

それから8年以上が過ぎた今年7月4日、中山氏は険しい表情で自民党本部にやってきた。次期衆議院選で公認されるかどうか、危うくなってきたからだ。

中山氏は衆院選大阪4区の支部長だ。つまり公認されることが予定されているはずだった。ところが、党本部は大阪4、8、11、12、15、17区の支部長6人を、公募で選び直す方針を一方的に決めてしまったのだ。

4区:中山泰秀▽8区:高麗啓一郎▽11区:佐藤ゆかり▽12区:北川晋平▽15区
:加納陽之助▽17区:岡下昌平。この6氏が支部長選びなおしの対象となった。

もちろん、公募してどんな人材が集まるかは分からず、彼らが再任される可能性はあるが、先行き不透明になったことだけは確かである。

中山氏は衆院で当選5回を数える。父は元衆議院議員の中山正暉、伯父は元外務大臣の中山太郎、祖母は女性初の大臣(厚生大臣)となった中山マサ、という名門家系だ。自民党にどっぷりつかってきた典型的な世襲政治家といっていい。代々、自民党のために尽くしてきたというプライドは高いだろう。

それだけに、支部長をあらためて公募する、すなわち支部長を辞めてもらうという党本部のお達しには、はらわたが煮えくり返る思いがしたに違いない。

2021年の衆院選で、自民党は、候補者を立てた大阪の15の小選挙区で維新の候補に全敗した。中山氏も大阪4区に立候補し、維新の候補に大差をつけられて落選した。

このときはまだ、中山氏にも「大阪は『お笑い100万票』と言われるけど、その100万票が今、維新に行っている」と、維新の人気が一時的なものだと見るゆとりがあった。

だが、その考えが甘いことを、今年4月の統一地方選ではっきりと思い知らされる。維新は大阪府議選、大阪市議選で目標としていた過半数の議席を確保する勝利に沸いた。一方の自民党は府議会で9議席、市議会で3議席を減らし、大阪府連・府議団・市議団の3幹事長もそろって落選する憂き目にあった。

かつて自民党が誇った選挙組織の足腰は著しく弱っている。大阪府政、大阪市政を維新に牛耳られるなか、自民党得意の利益誘導政治ができないのも一因だろう。権力を失った自民党大阪府連には魅力が失せ、もはやガバナンスもきかなくなっている。

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