プーチンを支持、ウクライナを叩き潰せ。メディアが報じない“もう一つの真実”

 

ウクライナ産穀物輸出協定の停止を突き付けたプーチンの思惑

その“意図”はプーチン大統領にとっては明白で、それが18日に一方的に停止を突き付けた「黒海におけるウクライナ産穀物の輸出協力」につながっているようです。

表面的には「ロシアのSWIFTへの復帰」を協定の復活の条件に挙げていますが、それと並行して、ウクライナ経済の首を絞めることで、暗に停戦に向けた呼びかけをしているとも受け取れます。

しかし、現時点での停戦を行う場合、most likelyなケースでは、【クリミア半島のロシアによる実効支配は揺るがず、一方的にロシアが編入したウクライナ東南部4州の帰属もロシアになることを受け入れ、ウクライナは中部と西部を確保して、領土的一体性を保つという選択肢】になってしまうというのが、調停グループの見解です。

これはゼレンスキー大統領にとっては、自身の存在と立場を保持するためには、受け入れることができない(受け入れることが許されない)状況となりますが、実際にNATOとの確執が起きるきっかけにもなっていることから、進むも地獄、退くも地獄という非常に難しい状況にあると理解できます。

ゆえにゼレンスキー大統領にとっては、苦難を予想し、実際にロシア側の倍以上の犠牲を出している現状下においても、東部の奪還(そしてさらに困難なクリミア半島の奪還)に邁進し、少しでも領土を取り戻したという状況作りが必要となりますが、それゆえに戦況の痛々しいまでの泥沼化につながっています。

そこに舞い込んできたのがロシアによる穀物輸送の安全確保に関する協定の一方的な停止だったのですが、この決定への報復なのか、元々計画されていたのかは分かりませんが、ウクライナ軍はクリミア大橋に対するドローン攻撃を加え、(ロシアの発表によると)通行中のロシア人夫婦2人を殺害しました。

クリミア半島そして大橋への攻撃は、2014年の勝利、そして自身の支持率を一気に高め、リーダーとしての威厳のシンボルへの攻撃とみなすため、プーチン大統領は同日そして19日に報復措置としてオデーサの港・港湾施設への精密誘導ミサイルによるピンポイント攻撃を行いました。

オデーサの港は、ウクライナ最大の港で、先述の穀物輸出の窓口でしたので、今回の爆撃で実質的に使用不可になったわけですが、元々一方的に協定の停止を宣言したのにはどのような狙いがあったのでしょうか?

ちなみに、世界第5位の穀物輸出国であるウクライナからの安価な穀物の共有が停止し、それが長期化する場合、世界的な食糧危機へとつながる恐れが予測されますが、確実に非難を拡大することになる手段を取ってまで叶えたい目的は何なのでしょうか?

表向きは欧米による対ロ金融制裁の解除、特にSWIFTへの再接続を条件に掲げていますが、本当の目的がほかにあるのではないかと思われます。

SWIFTに接続していないことで支払いが滞るという実務的な問題は起きていますが、外貨のアクセスと決済については、中国とインド、中東諸国と接続していることで、それなりに賄うことが出来ていると言われていますので、本当にそれが目的だったのかは謎です。

今回の協定の停止により、表出する効果は【ウクライナの国民生活の締め付け】がありますが、それに加えて、反ロシア包囲網(欧米とその仲間たち)に対する圧力の増幅もあるのではないかと思います。2022年2月のウクライナ侵攻以降、ロシアに課した経済制裁が今、じわじわと欧州経済と家庭生活に大きな痛手を与えています。欧州で止まらないインフレ、特に小麦などの穀物価格の高騰などがそれですが、欧州国内からの突き上げを誘発する起爆剤との見方ができます。

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