プーチンを支持、ウクライナを叩き潰せ。メディアが報じない“もう一つの真実”

 

プーチンが摘むことに成功したNATOによる対ロ直接攻撃の芽

もう一つはグローバルサウスの国々を欧米諸国からさらに引き離すための工作という見方です。

今回の一方的な協定の停止と並行してロシア産の穀物を無償でアフリカ諸国などに供する枠組みを提唱するようですが、これによりアフリカやラテンアメリカ諸国、そして中東諸国、そして東南アジア諸国の取り込みを図ろうとしていると思われます。

「ウクライナによる協定下での輸出は、ほとんどが欧州各国に向けられており、本当に必要とする国々には到達していない。欧州各国によるまやかしの善意だ」と非難して、対欧米批判を引き起こし、ロシアシンパを増やす作戦です。

これには中国とインド、南アとの協力が存在していて、各国の国民生活を盾にpolitical gameが行われているという、なんとも恐ろしい現状を垣間見ることが出来ますが、ウクライナ国民への締め付けと欧州市民への圧力を加えることで、対ロ制裁の結束を綻ばせ、欧米諸国による対ウクライナ支援にもムラを持たせようとしているように見えてきます。

そしてこれはNATO諸国における対ウクライナ支援疲れに繋がっていきます。

先のNATO首脳会議では「ウクライナに対する支援の継続」が合意されていますが、NATO諸国、特に今年秋口から来年の大統領選挙に向けた動きが本格化するアメリカは、何とか秋口までに一旦停戦させることを念頭に置いて合意したようですが、同時にNATO諸国は、この戦争に決着がつく形での停戦が実現するというシナリオは現時点で非現実的であることも分かっているため、ウクライナに選択を委ねるため、NATO加盟問題の議論を始めるタイミングと停戦状態をセットにしたようです。

ただプーチン大統領が予想していたであろう形で、ゼレンスキー大統領とその周辺は「馬鹿げた話」と一蹴していますので、NATO側としては“寄り添う”形は維持しつつも、「結局はウクライナの戦争であり、NATOの戦争ではない」との一線を保つチョイスをしたと言えます。

これで目論見通り、NATOとウクライナの切り離し、つまりNATOによる対ロ直接攻撃の芽は、現時点で摘むことが出来、ロシアは対ウクライナ戦争とBeyondに集中できることになります。

ここで効いてくるのが、6月末の乱以降、動静も思惑もつかめないプリコジン氏とワグネルの存在です。

プリゴジンは今、どこで何を

今週に入り、プーチン大統領がワグネルの“新しい”指揮官について言及し、プリゴジン外しを演出していますが、ワグネルは解体されておらず、ロシアにとって特殊部隊的な役割を果たすという見込みが出てきています。

プリコジン氏は「ベラルーシをとっくに離れ、サンクトペテルブルクに戻ったという説」と「ロシアとベラルーシを行き来できている」という説が混在しますが、20日にSNS上に投稿された動画では、プリコジン氏らしき人物がワグネルに対して薫陶し、「ワグネルはベラルーシ軍を世界第2位の軍隊にする」と宣言をしているところを見ると、恐らく彼はベラルーシとロシアを行き来できる“自由”を獲得していると見ることが出来ます。

そして乱の後も、実際にはワグネルはまだ死んではいません。20日の英国情報機関の分析では、乱直後に用意されたベラルーシ国内の8,000人収容可能な施設とは別に、ワグネル用の軍事基地が建設・設備されているようで、ワグネルの主力2万5,000人から3万人の勢力がベラルーシを拠点とする準備が進められていることが分かります。

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