3.マインドコントロールされている子供の実態に気づくこと
一般論として、騙そうとする者は外面がよいので、嘘を見抜くのは極めて難しくなります。
性善説で対応していてはダメで、当事者は嘘をつくことを前提で聞き取りをしなければなりません。「隠していることがあるかもしれない」という疑いの眼で接することにより話の矛盾やおかしさに気づけます。
今回の件では、子供を守るために欠けている点が二つあると考えています。
一つは、市は「病気(難病)については繊細な話なので、突っ込まなかった」と説明をしていますが、結局は聞き出せなかったところに原因があると思います。
時折「役所には聞き出すための十分な権限がないから」という話も耳にしますが、理由はそれだけではないと思います。ルポライターとして活動している私は何も権限はありませんが、取材のなかでいろんなことを聞き出しています。
要は、スキルの問題です。
前提として、虐待を受けている子供は嘘をつかされています。そこから真実を見抜く目を持つ必要があります。
私自身、取材などで悪質業者や詐欺師と話しますが、基本、彼らは嘘ばかりを話します。その時、相手の話す100のうち90%は嘘だと思って聞いています。
そこで様々な角度の質問をしながら、相手の嘘まみれの話のなかから、10%の真実を見つけていきます。この作業は大変ですが、質問の仕方で、できないことはありません。
子供は虐待だと気づいていないけれど言葉は発しています。サインは出ているはずです。その声のなかから、真実を見抜くスキルこそが、子供を守るために求められています。
そのためにも、二つ目の「マインドコントロールをされているかもしれない」という視点は大事になります。
報道のなかで「お菓子食べていいですか」と、子供は母親に敬語を使って許可を仰いでいたということです。
児童虐待に詳しい教授は「見捨てられるという不安を慢性的に抱えていたのではないか」という見立てをしています。子供の「従わなければ罰があるかもしれない」という恐怖心は相当なものだったと思います。
こうした母親への絶対服従のなかに、私はマインドコントロールの手法をみました。
強い不安感のなかで、母親に指示を仰ぎ、絶対服従せざるをえない状況で行動していますが、これはまさに、旧統一教会の組織のなかで信者らに行われていたマインドコントロールの状況とよく似ています。
教団では、衣食住(お金を含む)を規制して、相手の行動を支配していきますが、子供も同じ構図での行動を操っています。
外界と接する機会のある大人でさえマインドコントロールにやられます。子供はさらに籠絡されやすくなります。
本当に被害を防ぐことを考えるなら、マインドコントロールの議論を進めなければなりません。
コントロールされている本人にいかに気づいてもらうのか。
被害をいち早く防ぐには周りの目が大事ですので、その兆候にいかに気づいてもらえるのかも考えなければなりません。
宗教2世への組織的教義、思想による宗教的虐待を防ぐためだけでなく、個人の親による身体的、精神的虐待も無くすためにも必要なことだと思います。
二度とこのような事態が起こらないよう、子供たちが受ける虐待に気づける目を多くの人が持てる状況を作る必要があります。
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