中国が一方的に引いた「南海九段線」が70年経っても消されないワケ

Large container ship at sea - Aerial image
 

領土紛争は国家間の法的攻防にも拡大している。フィリピンは2013年、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、中国を相手に仲裁を要請した。2016年7月、オランダ・ハーグに本部を置く国際常設仲裁裁判所(PCA)は満場一致で「中国の南海九段線主張には何の法的根拠もない」と判決しフィリピンの肩を持った。

しかし何も変わっていない。PCA判決は原則的に控訴対象ではなく、結果を遵守しなければならないが、強制力がなく実効性を期待するのは難しいとセイヤー教授は説明する。彼は「むしろ中国は2,000年前から中国領海だったという歴史的権原(けんばら)を主張し、国際機関の決定を無視して判決を下した判事たちを非難した」とし「判事5人のうちアフリカ系ガーナ出身がいることを理由に『アフリカ人がアジア沖について何を知っているのか』と冒涜した」と話した。

7年が経った今も状況は変わっていない。中国は東南アジア各国の排他的経済水域画定根拠となる国連海洋法協約が1982年に締結されただけに、自分たちがはるかに先に宣言した南海九段線を国連が制限することはできないとしPCA決定をあざ笑う始末だ。各種出版物と放送などで中国が主張する南海九段線が依然として登場する理由だ。

中国はなぜ国際社会との衝突を甘受してまで南海九段線の主張をやめないのか。セイヤー教授は「地政学」を理由に挙げた。南シナ海は世界の主要海上交通路だ。世界原油交易量の3分の1、液化天然ガス(LNG)の半分以上がここを通過する。全体の物流量は3兆4,000億ドルに達する。また、全世界の魚族資源の12%を占める水産物の宝庫であり、最大300億トンに達する原油と16兆立方メートルの天然ガスも含んでいる。事実上「経済生命線」であるだけに簡単に譲歩できないという話だ。

その上、中国の習近平国家主席が積極的に推進してきた「一帯一路」戦略の核心が南シナ海だ。南シナ海とマラッカ海峡、インド洋、アフリカまで続く「海洋シルクロードベルト」を構築するためには南シナ海の死守が必須だ。セイヤー教授は「中国は南シナ海問題に抗議する国家に陸海空軍はもちろん不法漁船まで動員して繰り返し苦しめている」とし「海路を先取りするための極端な民族主義行動を見せている」と説明した。

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