プーチンとコロナが開けた「パンドラの箱」。高まる核ミサイル攻撃の懸念

 

「30分で地球が壊滅する事態」に陥る一歩手前にある世界

個人的にはロシアが核兵器を使用することはないと考えていますが、それでもここ最近、ロシア国内の核戦力はon alert状態になり、いつでも使用できる状態になっているということですし、NATOサイドも、トルコにあるNATO基地の弾頭は例外として(注:トルコがアメリカ政府に対してNOを突き付けているとのこと)、NATOの核兵器もすぐに使用できる状態に置かれており、今、ロシア・欧州各国・アメリカがお互いに対して核弾頭を向けている状況にあります。

つまり何らかの間違いであったとしても、一発発射された時点で、相互に弾頭が飛び交う事態が容易に予想でき、長く見積もっても30分で地球が壊滅する事態に陥る一歩手前にいることになります。

NPT(核不拡散条約)の第1回目レビューのための準備会合の場でも、その異常な緊張感は共有されており、その場にいる者たちの目は、ロシアによるaggressionと核の使用の脅しのみならず、その背後で加速度的に進む核兵器の軍拡の動きにも向けられています。

国際社会の目と非難がロシアによる核兵器使用の威嚇に向けられている間に、私たち日本の周辺で急速に核軍拡が進められています。

北朝鮮は核開発を急速に進め(そしてロシアなどからの支援も受けて)、弾道ミサイルの性能も格段に上げたことで、ついに高い精度でアメリカ全土を攻撃できるミサイルシステムを手に入れ、そのICBMには小型化された核弾頭を搭載できるまでに至っているという分析が入っています。

北朝鮮が実際に核を使用するかどうかは金正恩氏のみ知るところかもしれませんが、アメリカや中国、ロシアと対等に話したいという願いと、リビアのカダフィ大佐が核兵器を廃棄したことで、後日、攻撃対象にされてしまったことを踏まえ、「核兵器を持たない国は大国に蹂躙される」という思い込みが強まっており、今後も核戦力の拡大が、国内の悲劇とは裏腹に、進められそうです。

中国については、中国人民解放軍の戦闘力と性能が著しく高まってきていますが、今後、“アメリカに追いつけ追い越せ”を支えるのは、核兵器と宇宙戦力と言われており、核兵器・核戦力の増強がかなり迅速に進められています。

現在、NPTの場では「核放射性物質の製造を禁止する」旨、話し合われ(FMCTとの関わりで)、核保有国の現状報告の基準と透明性の確保が議論されていますが、“国家安全保障上の問題”で拒否の姿勢を貫いているのは、中国だけです(注:北朝鮮はNPTを脱退しているため、対象とはならない)。

ちなみにあまり報じられませんが、中国が保有し、すでに配備されているらしいICBMはアメリカ・欧州全土を射程距離に収め、驚くことに北半球はもちろん、南半球経由でもミサイルを飛ばすことが出来る能力を手に入れているようです。非常に懸念すべき状況ではありますが、誰もその歩みを阻む国がありません。

アメリカも欧州も核保有国ですし、ロシアは“一応”味方で、北朝鮮も中国に守られる形で核開発を進めています。ライバル・インドも核兵器を持つ国ですが、自国に非難が跳ね返ることを恐れて、非難をしません。

皆さんもイラン核問題のニュースで耳にされているかと思いますが、ウラン濃縮度が20%を超えると、核兵器用の高濃度ウランを製造できるレベルまで高めるのは技術的には簡単と言われており、その能力を有する国は、実際に核兵器を製造し配備するかどうかは別として、結構な数に上ります。

「イランやイスラエルがそうするなら私たちも」と発言するアラブの大国たちもそうですし、すでに開発を止めた南アもブラジルもその能力は保有しています。

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