中国不動産セクターは、2021年後半以降に売上の落ち込みが顕著になっています。その結果、中国第2位の不動産開発会社である恒大集団(エバーグランデ)が債務の元利金を償還できずに不渡りになり、以降、中国の不動産バブルは急速にしぼみました。
その恒大集団は今年7月に、開示を延期していた2021年と2022年の通期決算数字を発表しました。それによると2年間の純損失は単純合計で8,120億3,000万元(約15兆7,021億円)に上り、債務超過は22年末時点で5,991億元(約11兆5,847億円)と、きわめて深刻な状態にあることが判明しています。
そこにきて、今度は恒大集団の最大のライバルといわれる碧桂園の経営危機です。碧桂園は2022年末基準でマンション建設など3,000個のプロジェクトと関連する1兆4,000億元(1,990億ドル)の負債があり、今年9月には58億元の債務満期が到来、利子4,800万元の支払いをしなくてはなりません。
● 中国不動産最大手に債務不履行の兆候…「恒大集団以上の衝撃」
加えて2024年末までに中国国内で24億ドル、海外で20億ドルの債務を返済しなければならないという状態で、破綻まっしぐらといった状態です。
碧桂園には恒大集団よりも4倍も多いプロジェクトがあり、もしも破綻すれば、2021年の恒大ショック以上の衝撃が中国経済を襲うと見られています。それどころか、碧桂園または恒大集団のいずれか片方が破綻すれば、それはまたもう片方、さらに別の不動産開発企業の連鎖破綻を呼び込むことになり、アメリカのリーマンショック級のシステミックリスクを引き起こしかねません。
この不動産市場の低迷は、もちろんゼロコロナ政策による買い控えや開発の遅れによる部分が大きいですが、習近平政権による不動産規制も主因のひとつでしょう。習近平政権は2017年に不動産ローン規制などを厳格化し、投機目的による購入を制限しました。
また、2020年には、不動産開発業者の負債を強制的に減らすために、負債の対資産比率70%以下、純負債の対資本比率100%以下、手元資金の対短期負債比率100%以上という「三条紅線(三本のレッドライン)」の基準を定めて不動産会社を分類し、債務規模を制限しました。これにより、資金繰りに窮した不動産開発業者が販売前のプロジェクトを未完成のまま放置する案件が続出、住宅価格が急落しました。
● コラム:緩和された中国不動産規制、投機許容の有無が今後の鍵
加えて、中国の国有企業を利用した国際市場荒らし、技術や情報盗用、覇権主義の増大などでアメリカを始めとする西側諸国との対立を深め、「脱中国」「中国デカップリング(切り離し)」を促進させてしまったことも、経済減速の大きな要因でしょう。
要するに、ゼロコロナ政策を含めて、これまで習近平政策が行ってきた政策がことごとく失敗したということです。習近平政権は不動産業界以外にも、巨大IT企業や教育産業を締め付けてきましたし、今後もさらに民間企業を締め付けて、国有企業を強化する可能性があります。いわゆる「国進民退」です。そうなれば、ますます中国経済は沈んでいくでしょう。
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