世界の「クラブ社会」内では起きづらい大きな分断
そしてアメリカも、対立構造がなかなか解けない中、米中対立の激化は来年の大統領選挙に悪影響を与えかねないと考え、気候変動や経済面での融和を図ろうとしています。
そのアプローチを受け、中国政府は公言こそしませんが「分断した国際経済と社会を再度結びつける核となるのが中国政府であり、中国共産党だ」と触れまわりだしているのは、少し気になるところです。
通常ならばここで対中大非難合戦が繰り広げられ、ニュースを賑わすところですが、それは表面的なところだけで、国際情勢の最深部においては、実際には大きな波は起きていません。
以前より何度も議論され、私自身の経験に照らし合わせても、納得のいく見解があります。
それは【国際社会におけるクラブ社会(参加者が限られる社会・グループ)の中では大きな分断は起きづらい】ということです。
国連安全保障理事会の常任理事国(P5)は、現在、表向きは米英仏と中ロで対立している格好になっていますが、実際には安保理にはP5だけの事前協議の場が存在し、そこにおいて懸案事項に対する対応方針が固められています。ここでの議論は他の安保理のメンバー、つまり非常任理事国にはシェアされませんが、1945年以降約80年経つ今でも、このクラブ社会構造は変更していません。
よく似たことはG7でもG20でもあり、表に出てくるところは、各国の国内対策もあって対立を演出することも多々ありますが、クラブならではの決まりがあるかのように、グループの内部と外部を明確に区別し、内と外を際立たせることで、自国がメンバーとなっていることに優位性を国際情勢においてアピールすることになっています。
構造に照らし合わせた場合、ウクライナはそのグループの外に存在し、対ロ反転攻勢においてはNATOや欧米諸国とその仲間たちの支援は受けていますが、決してその仲間に入る状況は起き得ません。
そして皮肉なことに、ロシアを非難しつつも、この泥沼化している戦争の終わらせ方をロシア・中国、そして欧米諸国とその仲間たちはすでに議論していますが、当事国のウクライナはいつまでもその蚊帳の外に置かれている現実が存在します。
調停グループにはロシア人の専門家も、ベラルーシ人の専門家も、ウクライナ人の専門家も参加し、フラットな議論をそれぞれの分野の知見と経験に基づいて行っていますし、そこにはNATO各国の専門家も参加していますが、口には敢えて出さないものの、先ほどの認識は共有されています。
ロシア・ウクライナ戦争は確実に長期化しますが、長期化し泥沼化していく裏で、着々と“その後”の国際秩序の再構築に向けた議論が進んでいます。
出口が示される時には、それはつまり、何らかの“次のかたち”が合意されていることと言えるかもしれません。
さて、その“次のかたち”とはどのような姿をしているのでしょうか?
以上、国際情勢の裏側でした。
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ
image by: Aynur Mammadov / Shutterstock.com









