なぜ「核兵器」は存在するのか?答えを見出だせぬ国際社会が辿る最悪の道

 

ロシア・ウクライナ戦争でもっとも恐れられている事態

イスラエルの核に対する積極姿勢は、確実にイランを刺激し、そしてその間に挟まれるサウジアラビア王国をはじめとするスンニ派アラブ諸国を巻き込むことになるため、場合によっては最も核兵器による緊張が高まる地域になるかもしれません。

そしてそれはNATOの核を配備しているトルコにも影響が波及し、トルコを通じて今度はロシア・ウクライナ・ベラルーシ、中央アジア諸国、そして中央アジアと国境を接する中国、さらにはスタン系の国々と戦略的なパートナーシップを回廊の設置として持つインドそしてパキスタンにまで一気に広がる可能性が出てきます。まさに核のドミノ現象です。

恐らくこのような脅威、特にドミノは、机上の理論上のシナリオだと考えますが(考えたいですが)、相互抑止のバランスや歯車が少しずれるようなことになると、一気に拡大する可能性は否めません。

現在進行形のロシア・ウクライナ戦争において、もっとも恐れている事態は、アメリカまたはNATOによる“ウクライナへの核の持ち込み”です。

恐らくないと考えていますが、今後、対ウクライナ支援が遅れ、流れが鈍くなる場合に、そしてロシアが春先に一気にウクライナへの攻勢を強める場合、検討されうるシナリオだと言われています。使用目的ではなく、あくまでもロシアによる核兵器使用に対する直接的な抑止と見られていますが、これは実際には“核戦力同士の直接対決”を招きかねないという非常に危険な可能性を持つことに繋がるのではないかと懸念しています。

ロシアがベラルーシに配備した戦術核と同じく、その運用権限は供給した側が握ることになるはずですが、そのコントロールがどこまで徹底できるのかは不透明と言わざるを得ません。

これらの可能性はあくまでも仮定ではあるのですが、常に立場上、ワーストシナリオが起きてしまった場合の手段を考えておかなくてはならず、そのための専門家グループとの密接な協力関係を持っているため、ちょっと怖い内容も出てきてしまいがちです。

ちなみに米ロという2大核戦力の特徴は、自国領外にも核兵器を配備していることでしょうか?明確な数は明らかにはなっておりませんが、アメリカ軍の場合、国内外100か所以上の米軍基地に核が配備されていると言われています。運用は米軍が行うことになっていますが、今、議論になっているのが“核を受け入れている各国の見解の確認と政情の安定度の確認の必要性”です。

アメリカの核配備先は基本的に同盟国(軍事、政治、経済的なすべて)に限られていますが、安全保障上の協力関係の詳細は必ずしも同レベルではないため、今、各国との2国間、または多国間のデリケートな調整の真っ最中と聞いています。

これは大きくは権限の問題だと言われていますが、見落としがちなのが核兵器に関わるコストの側面です。開発・製造に多大な費用と労力が必要とされることは容易に想像できますが、核兵器配備後の維持費は毎年莫大な額面になり、さらに耐用年数(使用期限)切れのものは廃棄される必要があり、その廃棄には莫大な費用と膨大な時間が掛かると言われ、核保有国の軍事予算のかなりの重荷になると言われています。

今後、そのコストをだれがカバーするのか、というのも、実は整理の対象になっているため、非常にデリケートな政治・外交問題に発展してきています。

ならば核兵器なんてなくして、コストはかかっても廃棄してしまえばいいじゃないかとなりがちですが、まさにこれはゲーム理論の範疇のお話になってしまうため、実行するのは至難の業となっています。

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