すべては麻生太郎の「筋書き」通りか?安倍派だけが地検特捜部に“狙い撃ち”された裏側

 

岸田首相に憎悪の炎を燃やす多くの安倍派所属議員

そのような情勢下、政権にかろうじてしがみついている岸田首相は一時、内閣と党三役から安倍派を一掃する考えを固めたといわれている。政権中枢に東京地検特捜部の捜査のメスが入る事態を避けたいためだろう。浅はかなことに、安倍派を追放すれば岸田政権のイメージが改善されると思ったのかもしれない。

安倍派の閣僚は松野官房長官、西村康稔経済産業大臣、鈴木淳司総務大臣、宮下一郎農林水産大臣だ。14日にも、この4閣僚を更迭するが、安倍派所属の副大臣と政務官については検討中のようだ。

22日には、萩生田光一政調会長や高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長も交代させる方向だったらしいが、萩生田氏は「出処進退は自分で決める」として14日中に辞表を提出するかまえだ。

萩生田氏の姿勢からは、安倍派幹部としての意地のようなものが感じられる。実のところ、安倍派の所属議員の多くが岸田首相に憎悪の炎を燃やしているのではないだろうか。これまで最大派閥の支持を得るために安倍派の幹部を政権の要所に配置してきた岸田首相が手のひらを返し、バッサリと彼らを切り捨てようとしているのである。

これで岸田首相は、来年秋の総裁選に出馬しても安倍派のまとまった支援は得られないだろう。ただでさえ内閣支持率が最低水準に達し、求心力が衰えている。泥船となって沈みつつある政権を麻生氏や茂木氏がいつまでも支えてくれるはずもない。それを覚悟のうえでこの人事を断行するとしたら、もはや総裁選での再選をあきらめているということか。

それにしても、この問題でメディアに追いまわされている政治家たちの見苦しい対応ぶりには辟易する。誰もが「捜査中なので」という理由を金科玉条のようにあげて、口をつぐむのだ。

内閣のカナメである松野官房長官は、1,000万円を超える裏金キックバックの疑惑について国会で追及された。松野氏は、想定問答ペーパーにいくつかの答弁パターンを用意し、どのような質問に対してもその中から選んで読み上げた。

「政府の立場としてはお答えは差し控える」「派閥への告発が行われ、関連して捜査が行われていることを踏まえて適切に判断する」「私の政治団体についても精査して適切に対応したい」。

延々それを繰り返して、恥じるところがないのだろうか。キックバックを受け取ったのか、受け取らなかったのかという単純な質問にさえ答えない。やましいところがなければ、きっぱり否定できるはずだ。

要は、刑事訴追されるのが怖いだけのこと。キックバックをもらったことを「イエス」とは言いたくないが、「ノー」と言えば、嘘をついたことになる。何も言わないのが賢明だから、意味のない答弁で時間をつぶすしか手がなかったということか。実にあさましい。

キックバックされた裏金の額が直近5年間で1,000万円をこえるとみられている安倍派幹部は、松野氏、世耕参院幹事長、高木国会対策委員長の3人である。朝日新聞によると、このほか、安倍派座長の塩谷立氏が数百万円、萩生田政調会長も数百万円、西村経産相が約100万円とされる。

ただし、共同通信によると、同じ期間に9,000万円超のキックバックを受けて裏金にしていた議員が1人いることがわかっている。これだけ多額の裏金を受け取ったとすれば、特捜部が逮捕の対象者としてみている可能性が高い。

このほか、派閥から直近5年間で5,000万円超~4,000万円超の裏金のキックバックを受けた疑いがある議員が3人いる。「頭悪いね」発言で注目度急上昇の谷川弥一衆院議員、大野泰正参院議員、それに安倍派の“パー券営業部長”こと、池田佳隆元文科副大臣だ。橋下聖子氏も1,000万円以上で名が挙がっている。

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