森喜朗氏に次々と降りかかる「攻撃の矢」
森氏の言動に特徴的なのは、自分は他人や組織のために一生懸命尽くしているのに、政敵や世間は一向にそれを認めないばかりか、なにかにつけ、自分に攻撃を仕掛けてくるという感情がしばしば奔出することである。
1月25日の読売新聞に掲載された以下の記事は森氏のそうした被害意識に火をつけた。
自民党執行部が、派閥による政治資金規正法違反事件を巡り、立件対象とならなかった安倍派幹部について、自発的な離党や議員辞職を求めたことがわかった。自ら身を処さない場合、党として厳重な処分を科すことを検討している。
茂木幹事長が親しい記者に書かせたとされる記事である。茂木氏の意図はわからないが、森氏にしてみれば、自分が派閥の後継会長候補と見込む“五人衆”を党から追放し、清和会を根絶やしにする動きだと受け取ったに違いない。
安倍元首相亡き後の自民党は、麻生副総裁が岸田首相と茂木幹事長を操って主流三派連合を形成、森喜朗氏が背後で最大派閥・清和会を牛耳るといった勢力図を描いていた。
攻撃の矢が自分に向けられていると森氏が感じたのもやむをえまい。
その後、森氏がどのような行動に出たかは、現代ビジネス(2月11日)の記事が詳報している。
麻生が裏で糸を引いていると見た森は、新聞が出たその日に、麻生事務所にやって来て、怒鳴り散らした。
「アンタの派閥は存続させるとか言ってるけど、勘違いしないほうがいい。アンタもすでに終わってるんだぞ!」
森の剣幕は尋常ではなかった。
麻生氏は黙ったまま聞いていたというが、たしかに派閥のパワーバランスを力の源泉としてきた麻生氏自身も、岸田首相の「派閥解消」作戦で深手を負っている。長老二人が織りなす光景を想像しながら、古き自民党が音を立てて崩れていくさまを思った。
二人とも、もうそろそろ悠々自適に暮らせばいいのだろうが、権力争いの後始末はよほど難しいとみえる。
とりわけ森氏のほうは、東京五輪汚職の裁判の成り行きも気がかりなことだろう。
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