五輪ワイロ問題の責任は「自分ではなく森会長」
先述した五輪組織委員会元理事、高橋被告が、このところ「週刊文春」やTBS「ニュース23」といったメディアを通じて、森氏に求めている内容はけっして生半可ではない。
高橋氏は電通の元専務で、スポーツマーケティングのコンサル会社代表だが、東京五輪のスポンサー契約などをめぐる受託収賄事件で企業から1億9800万円のワイロを受け取ったとして起訴され、裁判が続いている。
裁判の最大の争点は、組織委理事(みなし公務員)だった高橋氏にスポンサー集めについての「職務権限」があったかどうかだ。
検察は「高橋氏にスポンサー集めなどマーケティングを担当してもらった」という当時の組織委会長、森喜朗氏の供述調書を根拠に職務権限があったとし、受託収賄罪を適用した。
これに対し高橋氏は次のように主張する。
「理事会で、マーケティングは会長に一任することに決まった。森先生にマーケティングを担当してと頼まれたことはなく、職務権限はなかった。森先生が勝手なことを言っているだけ。企業からもらったのは賄賂ではなく、コンサル料だ。森先生に法廷ではっきり間違っていたと言っていただきたい」
要するに、権限は自分ではなく森会長にあったと言いたいのであろう。
高橋氏は第2次安倍政権がスタートしてまもなく、当時の安倍首相から五輪招致活動への協力を頼まれたさい、いったんは断った。巨額のカネが動くオリンピックの裏側を熟知していたゆえだが、「絶対に迷惑がかからないようにします。それは僕が絶対に保証します」と安倍氏に言われて、東京五輪の招致にかかわるようになり、五輪組織委員会の理事におさまった。
その代償として、逮捕され、法廷に引きずり出される身となってしまった。森氏に対する強い要求には、そうした経緯にまつわる思いの全てが凝縮されている。
森氏は供述の間違いを指摘されている以上、反論なり訂正なり、法廷ではっきりした態度を示すべきであろう。
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