NATOが直接介入なら「全面核戦争」をも想定しているプーチン
しかし、ここまでの脅威への対処については、“アメリカはやってこない”というBig Ifに基づくシナリオであり、アメリカの次期政権が積極的に介入してくる可能性も否めません。
その決め手は【ロシア・ウクライナ戦争のend gameにどれほどアメリカが関わる必要があるか】【イスラエルとハマスの戦いがどれだけ継続し、その対応にどれほどアメリカのリソースが割かれることになるか】【経済的なスランプが囁かれる中国が、どの程度、台湾対応とアジア太平洋地域にリソースを割くことができるか】といった要素によると考えています。
これら3つの要素に対して影響力を行使し得る存在の一つがロシアです。
一つ目の【ロシア・ウクライナ戦争】については、その当事者ですので、もちろん直接的な影響を与えることが出来ますが、これまでいろいろな話をし、分析結果を見ていて明らかになるのは【ロシア・プーチン大統領はこの戦争を長引かせ、欧米諸国をできるだけ足止めしておきたい】という思惑です。
NATOが直接介入してくれば、全面戦争を覚悟し、それこそ世界の終焉をまねく全面核戦争も想定しているようですが、ロシアもNATOもその可能性はかなり低いと見積もっているようです。
それはつまりNATOによるウクライナへの直接介入(派兵)はなく、あくまでもウクライナ軍のキャパシティーを拡大する形式を継続することと、“自衛”という名目の下、ロシア領内の軍事的なターゲットへの攻撃は黙認するという“消極的な介入”に留まることを意味します。
これが私も再三言っている“ウクライナを結局は見捨てる”ことに繋がるかどうかのご判断はお任せしますが、欧米諸国からのウクライナ支援が滞ったままで、どうしてもToo little; too lateの状況が解消されない限りは、戦争をどこまで・いつまで継続させるかは、ロシア側のさじ加減とも解釈できます。
先週号などでも触れたように、戦い続けるパターンに加えて、現在の軍事的に優位な状況を活かして、On Russian Terms(ロシアの条件による)停戦協議に前向きな姿勢をアピールし、停戦協議に応じることもできれば、このまま戦争を続けることもできるとすることで、じりじりと時間稼ぎをして、アメリカと欧州をウクライナに繋ぎとめておくことに注力しているように見えます。
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ロシア政府・軍関係者曰く、「私たちはいつでも望むときにウクライナに止めを刺すことが出来る」らしく、軍事的なend gameも視野に入れて、同時進行的に対応しているようです。
しかし“ロシアの勝利”をより確実にするために、欧米諸国とその仲間たちの目と注意を地域から逸らすための工作も同時に講じています。――(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2024年3月22日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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