プーチン圧勝で2030年まで続く独裁政治。ウクライナを滅ぼす「暴君」は国際社会に何を仕掛けるのか?

 

国家としての存亡が絶望的になるウクライナ

ロシアの企みを阻止するには、ロシア・ウクライナ戦争が【ウクライナ領内に留まっていること】が大事なのですが、その成否は、比較的短期間にNATO諸国とその仲間たちが、ウクライナに対して、ロシアからの攻撃激化を跳ね返すことができるだけの軍事的な支援を行うことが出来るかどうかにかかっています。

すでに3年目に入ったロシア・ウクライナ戦争ですが、アメリカもNATO軍も直接的な介入はせず、あくまでも軍事支援を行い、戦うのはウクライナ軍という構図が確立していますので、NATOが今後、ロシアとの直接的な対峙という非常に大きなリスクを冒してでも勝ちに行こうとしない限りは、ウクライナにとって非常に厳しい状況が続く可能性が高いと思われます。

この戦争において、ロシア優位が固まり、NATO諸国とその仲間たちがToo late; too littleと批判されている慎重なサポートに留まるのであれば、いろいろなパターンが考えられるにしても、ウクライナはロシアに席巻され、下手すると国家としての存亡が絶望的になります。

ロシア軍からの攻撃に耐え切れずに、物理的・軍事的に敗北し、ずるずるとロシアがポーランド国境リビウのあたりまで進むというパターンもあれば、ロシアの侵攻は、今回はドンバス地方の確保に留まっても、何者かによってゼレンスキー政権が打倒され、キーウに親ロシア政権が樹立され、実質的にロシアの傀儡になってしまうパターンも考えられます。

そしてロシアの侵攻の進捗状態とは関係なく、ウクライナで政変が起き、ゼレンスキー大統領が追放されるパターンや、東南部はロシアに編入された状態が固定され、キーウがある中部(ウクライナ国教会)とポーランド国境沿いの西部(ポーランド系住民が多数を占めるカトリック教徒)にウクライナが分裂するというシナリオも考えられます。

この“ウクライナの敗北”は、欧米諸国、NATOとその仲間たちの信頼を著しく崩壊させることになり、欧州独自の安全保障体制の確立のニーズが高まったり、アメリカ中心の同盟関係の軋みと同盟の求心力が低下したりすることに繋がります。

日韓とともに台湾有事で中国と戦う決意を固めた豪州

そしてそれは、中国“問題”を抱える広域アジアとアジア太平洋地域にも拡大され、「中国がよりアグレッシブな姿勢を取り、自国に安全保障上の危機が訪れる際に、アメリカとその仲間たちは守りに来てくれないのではないか」という疑心を掻き立て、地域における集団安全保障体制が崩壊することにも繋がりかねません。

今回、キャンベラ訪問中に非公式に面会しているオーストラリア政府および専門機関の外交・安全保障関係者と話した内容を少し紹介すると「仮に台湾有事が勃発しても、ウクライナに対するアメリカの姿勢を見れば想像できるように、アメリカ軍が主導権を取って中国人民解放軍と交戦するとは思われず、恐らくオーストラリアと日本、そして韓国が一時的な対応を迫られるだろう。これまでのオーストラリアの安全保障体制および政策では領域外で起きた紛争に対しては積極的な関与は避ける方針だったが、中国の脅威と圧力の高まりに直面して、より積極的かつ直接的なコミットメントを行う姿勢に変換した。中国が必ずしも全面悪であることはなく、重要な経済的なパートナーであることもまた事実だが、地域における軍事大国であり、領土的野心を持つことから、警戒し、備えておかなくてはならない」という認識が共有されています。

互いの情報量に差があるため、そのまま追従することはしませんが、オーストラリア政府が中国による脅威をより現実のものと見据え、安全保障政策を一歩踏み込む形で変換しているのは、日本にとっても重要な情報であると感じます。

中国に領土的野心があるかどうか(対台湾ではなく、周辺国)、そして本当に武力による台湾侵攻を真剣に検討しているのかはなかなか見極められていませんが、「有事の際にどう動くのか」については可能な限り詳細に戦略を立てておかなくてはならないと考えます。

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