22日、モスクワのコンサートホールで発生し、300名以上の死傷者を出したテロ事件。事前にアメリカからもたらされていた「テロ発生の警告」を無視したプーチン大統領が大失態を犯した形となりましたが、フェイク情報の流布で窮地の脱出を図る手に出たようです。今回のメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、プーチン氏が流す2つのフェイク情報を紹介。クレムリンの「大ウソ」に騙されることがないよう注意を呼びかけています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです
モスクワの「テロ事件」見えてきた全体像
全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!北野です。
3月22日、モスクワ近郊のコンサートホールで起きたテロ。2日前にメルマガを出したときは、情報が少なすぎて、よくわかりませんでした。しかし、テロ発生から3日が過ぎ、全体像が見えてきたのでお伝えします。
起きたことを時系列でみてみると
まず3月7日。アメリカは、クレムリンに、「モスクワでテロの可能性がある」と警告しました。『読売新聞オンライン』3月23日。
テロに関する情報については、在ロシア米国大使館が7日、モスクワで「コンサートを含む大規模な集会」を標的にしたテロを起こす計画の存在を公表していた。AP通信は、米側が露当局者と情報を共有したと伝えた。
これ、ロシアメディアが3月8日に報道していたので、間違いありません。たとえば『プロエクティ』3月8日付。
● 出所:США и Великобритания предупредили об угрозе терактов в Москве
元記事をざっくり訳してみましょう。
3月7日夜、在ロシア米国大使館は今後2日間にモスクワでテロ攻撃の脅威があると警告した。
「大使館は、コンサートを含むモスクワの大規模な集会を襲撃する過激派の計画に関する報告を監視している。米国国民は今後48時間、人混みを避けるよう勧告される」と米国大使館のウェブサイトには記載されている。
さらに、国務省はロシアへの渡航の危険レベルを最大4に引き上げたとコメルサント紙は指摘した。
英国外務省はウェブサイトに米国の警告を掲載した。
金曜朝、ラトビア外務省は同胞に対しロシアへの旅行を控えるよう呼び掛け、またこの国の国民に対してはできるだけ早く国境を離れるか、少なくとも大規模な集会を避けるよう呼び掛けた。
金曜日後半には、主に在ロシア米国外交使節団からの情報により、韓国、カナダ、ドイツ、チェコ共和国、スウェーデンも警告に加わった。
ロシア当局はこの情報についてコメントしていない。
3月8日、モスクワでは国際女性デーにちなんだ多くのイベントが計画された。
3月8日付の記事が残っている。つまり、アメリカは、確かにロシア政府に「大きなテロの準備が行われていること」を警告していたのです。そして、イギリス、ラトビア、韓国、カナダ、ドイツ、チェコ、スウェーデンがこの警告を真剣に受け止め、自国民に注意を促していました。
ところが、3月8日、9日にテロは起こりませんでした。理由はわかりませんが、「アメリカの警告が報道された」ことで、テロリストたちは、「ヤバイ!ばれてるぞ。延期だ!」となったのかもしれません。
一方、予告されたテロが起こらなかったことで、プーチンは何を感じたのでしょうか?
これは、私の主観的な意見です。
アメリカが、「テロが起きる可能性がある」と警告したのは、3月8日、9日です。そして3月15日~17日には、ロシア大統領選挙が迫っている。テロは起きなかった。
プーチンは、「大統領選前に、アメリカがフェイク情報でロシア国内を不安定化させたかった」と考えたことでしょう。
3月17日、プーチンは大統領選挙で圧勝しました。