野球 国際化の現在地
MLBの国際化戦略は決して順調とは言えなかった。MLBは、初め、中国市場へ進出。2008年の北京夏季オリンピックを機に、中国で野球を広めるための熱心な取り組みを開始したものの、野球の人気は伸び悩む。
対照的に同じ時期にNBAで中国出身の姚明選手が活躍し、バスケットボールの人気が高まっていく。
その後、MLBは欧州に目を向け、イタリアを含む各地でアカデミーを設立し、才能の発掘と新たな市場の開拓に取り組む。
そして2019年には、英ロンドンでメジャーリーグの公式戦が初めて開催。イギリスは野球のルーツとも言えるクリケットの発祥地であるため、野球の普及に期待が寄せられる。
近年では、中東にも注目が集まり、2022年7月には中東初のプロ野球リーグ「ベースボール・ユナイテッド」が始動。このリーグは、UAEとドバイを中心に湾岸諸国で試合を行う。
一方、日本の野球界はアフリカに目を向けている。例えば、ケニアでは昨年8月に高校野球大会が開催。
また、慶応義塾大学野球部出身で、国際協力機構(JICA)の職員だった友成晋也氏は、ガーナ、タンザニア、南スーダンの3カ国で野球普及のための活動に取り組んでいる(*4)。
5人制野球 「ベースボール5」注目
野球の国際化で注目されているのが「ベースボール5」という新しい形の5人制野球。
このゲームは、2017年に世界野球ソフトボール連盟(WBSC)によって考案され、特に若者や野球になじみの少ない地域での普及を目的としている。
伝統的な野球のルールに基づいているものの、フィールドが野球の内野よりも小さな21メートル四方であり、より短時間で試合が進むことが特徴。5イニングの場合、平均して約30分で完了する。
男女混合のチームで行い、それぞれ2人以上がフィールドに立つことがルールとなっている。そして投手がおらず、打者が自分で、ゴムでできたボールをトスして打つというスタイル(*5)。
ベースボール5は世界的にも広がりを見せており、ヨーロッパやアフリカを中心に70カ国以上で楽しまれている。
2022年にはメキシコで初のワールドカップが開催され、2026年にはセネガルのダカールで行われるユースオリンピックにも採用されることが決定した。
ベースボール5の普及によって、野球への関心が再び高まり、「野球消滅」という危機を乗り越え、野球人気が「再興」するか。こちらにも注目だ。
■引用・参考文献
(*1)鈴村裕輔「韓国で初の公式戦を行う大リーグの思惑…背景に高校球児わずか『約3600人』の惨状」日刊ゲンダイ 2024年2月28日
(*2)大島裕史「『プロ野球第一』『大学進学のための全国大会』日本とは似て非なる韓国の高校野球事情」高校野球ドットコム 2019年9月6日
(*3)木村祐太「大リーグ 世界展開に汗 きょう韓国で初の開幕戦」日本経済新聞 2024年3月20日
(*4)神田さやか「『球児の夏』アフリカでも ケニアで甲子園初開催 慶大野球部もバックアップへ」産経新聞 2023年8月21日
(*5)大宮慎次朗「野球の新形態『ベースボール5』 甲子園出場チームが取り組む理由」朝日新聞デジタル 2024年3月18日
(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2024年3月24日号より一部抜粋・文中一部敬称略)
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