「改憲議論」以前の問題。率先して憲法違反を犯す自民や維新に高レベルの見識と叡智、倫理観が必要な憲法改正を任せられぬ訳

 

最悪なのは、第二次安倍政権あたりから、あからさまに憲法を軽視したような発言や、違憲にあたるような行為が目立つようになってきたことです。安倍元首相は、現行憲法を「みっともない憲法」などと呼び、9条に象徴される「平和主義」の原則を踏みにじって、集団的自衛権の行使を容認し武器輸出の解禁を伴う安保法制を2015年に強行採決で成立させました。

その後、防衛費の上限をGDP比2%に倍増させることを米国に約束し、岸田政権に至っては、昨年10月、5年間で43兆円もの防衛費を積み増すことを十分な国会審議や国民との合意形成をすることも無しに閣議決定のみで決めてしまいました。

憲法違反は9条に留まらず、たとえば14条「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」なども守られていません。自民党裏金議員たちが、政治資金規正法違反でも脱税でも、まったく摘発されない事例をみても、一般国民との差別は明らかです。

憲法違反の事例を挙げ出すと切りがありませんが、たとえば15条2項「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」も守られていません。森友事件が象徴的でしたが、今や多くの官僚は一部の政治家の奉仕者であって全体の奉仕者とはとても言えません。全体の奉仕者であることを誇りにしてきた近畿財務局の職員がその実態に悲観して自死されたことには断腸の思いです。

また、36条「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」などについても、ウィシュマ・サンダマリさん死亡事件における名古屋出入国在留管理局職員の態度は、公務員による拷問に当たらなかったのだろうかと感じます。

他にも、よく問題にされる「人質司法」の悪しき慣習などは、34条や38条に違反している可能性がありますし、大川原化工機事件など、公安や検察のでっち上げ等の暴走は一向に後を絶ちません。

いずれにしても、現行憲法を守っていない人たちに改憲を口にする資格はないと思いますし、改憲を議論するのであれば、まずは現行憲法をしっかりと遵守してからにして欲しいと思います。

ちなみに、前号の最後でも述べましたが、安倍元首相や岸田首相など、改憲派の自民党議員たちは、二言目には現行の日本国憲法は米国(GHQ)から押し付けられたものであると主張します。確かに、太平洋戦争で日本軍を極度に恐れた米国が、二度と日本を軍事大国にしないために仕組んだ背景はあったと思います。

しかしながら、前述の通り、誰よりも戦争の悲惨さを体験した日本人自身が、その教訓から戦争放棄を謳う平和憲法を諸手を挙げて受け入れたのも事実です。また、幣原喜重郎をはじめ、多くの日本人も草案作成に携わりました。ですから、私自身は、今の日本国憲法は必ずしも米国から一方的に押し付けられたものだとは思っていません。80年近くの長い時間を掛けて、日本人の血肉となった憲法であると思っています。

【関連】日本国民に対する裏切り行為。アメリカの意向に沿い国の形を変えてきたポチぶりを米国議会でアピールした岸田演説の“狂気の沙汰”

その日本国憲法の精神を尊重して平和主義を貫いて生きた日本人の代表格が、アフガニスタンで亡くなった中村哲氏のような人物でしょう。2001年9月11日の米国同時多発テロの直後、衆議院のテロ対策特別委員会に参考人として呼ばれた中村氏は、「自衛隊派遣は有害無益」と自説を述べ、好戦的な自民党議員たちからヤジを浴び無礼な対応をされましたが、微動だにしませんでした。

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