「もしトラ」対策のためでもある対中関係の修復作業
ウクライナに対する軍事支援と台湾有事切迫論の扇動も、軍産複合体による武器輸出市場の開拓意欲に政治が引き回されている点では同様と言える。が、ウクライナは、バイデンが自分の息子のウクライナにおけるエネルギー・ビジネス利権のことも含めて踏み込みすぎているので、収拾の目処をつけるのは難しいだろう。それに対して「中国脅威」の方は、まだ本格的な軍事紛争に至っておらず、仮に至れば世界秩序破壊の引き金にもなりかねない重大な事態となることが分かり切っているので、これを未然に回避しようとする議論が米外交政策マフィアの間で始まっている。
これは彼らにとっての「もしトラ」対策のためでもあるだろう。米国の対中国姿勢のブレがこれほどまでに大きく混沌としたまま仮にトランプに勝ちを許すようなことになれば、待っているのはそれこそ全世界にとっての大迷惑であるばかりか、誰よりも米国自身にとって自殺的な大破局なので、その衝撃を未然に小さくしておかなければならないということなのだろう。3つの最新の事例を紹介する。
(1)ロリー・トゥルーエクス「さあ皆さん、中国についてここで深呼吸を」(NYタイムズ5月7日付オピニオン欄)要旨
著者は米プリンストン大学の政治・国際関係の准教授で、同大では中国政治を講じている。書き出しが面白くて……
▼扁桃体は脳の基底部にある一対の神経群で、危険を察知しそれと闘うか逃げるかを素早く判断するのを助ける。が、余りに長く不安へのストレス反応を続けていると、実際には存在しない危険を感じてしまったり、最悪シナリオを思い描いてしまったりする。今、米国の国家機関の全体は、慢性的な中国不安症を病んでいる。ほとんど何にでも「中国の」という形容詞を付けるだけで政治システム内に恐怖反応を引き起こし、脅威を適切に判定しその前後関係を見極めるという能力を混濁させてしまう。
▼/米議会は中国人所有のソーシャルメディアであるTik Tokの販売を押し留めようとしてきた。/いくつかの州は中国の個人・団体が米国の土地を保有したり中国人研究者が米国の大学で働くのを規制しようと企ててきた。/連邦政府は技術力を持ついくつかの中国系企業が市場で競争に参加することを禁止してきた。――国家安全保障上の理由で採られたこれらの行き過ぎた方策は、中国政府がやっていることと瓜二つで、詰まるところ米政府に対し中国のようにもっと閉鎖的になれと要求しているようなものなのだ。
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