地方より大都市圏の公立小中学校こそ問題。学力や経済力ある家庭の子が“上から順に抜けていく”異常事態

 

教育現場において影響が甚大な「上から抜けていく」現状

まず、首都圏の場合、幼稚園から小学校に入学する6歳のタイミングで、一部の超富裕層の子どもは私立小学校に進みます。そこで公立の教育からこの階層が抜けていくのです。また小学校の3年生前後から、中学受験を意識する家庭の子どもは通塾を始めます。

通塾生の場合、主要教科については学校より先行して塾で学ぶことになり厳密に言えば、カリキュラムの内容習得は公立の教育の場ではなくなることになります。この層の多くは中学は中高一貫校に進学します。そうすると、経済的に一定の階層以上で、学習意欲や学力が一定以上の生徒はここで公立の教育から抜けていくのです。

それが一部の特異な才能を持つグループであれば許容範囲かもしれませんが、例えば私立中学と公立一貫校への進学者は、東京都全体で見てもほぼ20%となっており、毎年増加しています。20%といえば5分の1ではありますが、学力や経済力の観点から見て「上から抜けていく」というのは、これは教育現場においては影響は甚大です。

例えば、東京都の文京区に至っては50%が抜けるというのだから愕然とします。その結果として、東京の特に中心部の公立中学校には、経済的理由で一貫校を希望しなかった層と、一貫校の受験をしたが失敗した層とが「残る」ことになるわけです。こんな状況は世界的に見ても極めて特異な状況であると思われます。

つまり、その国の多くの人口が集中し、世界的に見ても人口と経済力が突出した大都市において、公立中学校の平均的な学力水準が他の地方より低下しているということです。

さらに言えば、大都市圏では高学力層の相当数が、私立や国立の一貫校に流れていることになります。海外から見て不思議なのは、そこにも公費が投入されていることです。富裕層が私立中高に子供を送り込むのは勝手だが、そこに公費が投入されるというのは、例えばアメリカでは全く持ってチンプンカンプンということになります。

最大の問題は、格差の世襲と少子化です。まず、私立中高へは公費が投入され、高校の場合は無償化の予算も注ぎ込まれます。ですが、入学にあたっては通塾が前提となっており、これは完全に無認可施設が営利事業として行っているわけです。もっと言えば、監督官庁は文科省ではなく、経産省であったりします。

つまり小3ぐらいから高額な月謝を払って子供を塾に送り込むことのできる階層しか、一貫校に入れないし、最終的には上位の大学にも入れないわけです。これは完全に階層社会であり、世襲により階層を固定化します。問題は、これが不公平なだけではありません。

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