2016年5月、安倍さんはプーチンに、「8項目の協力計画」を提案しました。要するに、安倍さんは、「金を技術をあげますよ」といったのです。北方領土は返したくないが、日本の金と技術は欲しいプーチンは、にっこり微笑み、大満足でした。2016年12月、プーチンが訪日し、日ロ関係は大いに改善されました。
このころ、ロシアでは、日本旅行がブームになっていました。ロシア国営メディアは、「安倍晋三は、欧米とは違うゲームをしている」と、大絶賛していたのです。
ところが、日ロ関係は、その後暗転していきます。
いくら日本が、ロシアに歩みっても、プーチンは一向に領土問題で譲歩する姿勢を見せない。安倍さんは2018年11月、ロシア側に非常に大きな譲歩をしました。「4島一括返還」をあきらめ、「2島返還」にシフトしたのです。「朝日中高生新聞」2018年12月16日付。
北方領土をめぐり、安倍晋三首相は11月14日、ロシアのプーチン大統領と会談し、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約を結ぶ交渉を加速することで合意した。日本政府はこれまで4島返還を求めていたが、2島の先行返還を軸に交渉する方針に転換した。
この大きな譲歩について、安倍さんの「親友」プーチンは、どう応じたのでしょうか?なんと、「北方領土を返して欲しければ、【 日米同盟を破棄しろ! 】」と主張しはじめたのです。「日刊ゲンダイDIGITAL」2019年3月16日付。
日ロ平和条約は絶望的──。15日付のロシア紙「コメルサント」は、プーチン大統領が日ロ平和条約締結交渉について「まず日本が日米安保条約から離脱しなければならない」と語ったと報じた。
これらの流れを追ってみると、
- プーチンは、北方領土を返す気が全然全然全然ない
- プーチンは、日本の金と技術が欲しいだけ
というのは、明白だと思いますが、いかがでしょうか?
そんなプーチン、今度は「北方領土を返して欲しければ、ウクライナ支持支援をやめろ!」と主張しています。これを素直に聞いて日本がウクライナ支持支援をやめたとしましょう。そしたらプーチンは、「北方領土を返して欲しければ、日米同盟を破棄せよ!」と要求してくるでしょう。要するに、プーチンの言うことを真面目に受け取る意味などないのです。
それでも、北野が日ロ関係改善を支持していた理由
とはいえ、私は2022年2月にウクライナ侵攻がはじまるまで、「日ロ関係改善」を支持してきました。「プーチンは北方領土を返す気が全然ないこと」を知りながらです。なぜでしょうか?「ロシアを反中包囲網に引き入れることができれば、日米は中国に勝てる」と考えていたからです。
私は、「中ロを分断し、ロシアを引き入れれば、中国に勝てる」と20年ほど前から主張していました。そして、同じことを「リアリストの神」ミアシャイマー教授も、「世界一の戦略家」ルトワックさんも主張していました。これは、リアリストにとっては、「常識的な策」だったのです。
しかし、2022年2月にウクライナ侵攻がはじまると、この策は「不可能」になりました。というのも、国連でウクライナを支持し、ロシアを非難した国は141か国だった。一方ロシア支持を表明したのは、北朝鮮、シリア、ベラルーシ、エリトリアの4か国だけ。
日本が、「ならず者国家群」の一員になってロシアの侵略を支持することは、国益に完全に反しています。だから、岸田さん、(増税路線はひどいですが)対ウクライナ、対ロシア政策は、正しくやっているのです。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2024年6月6日号より一部抜粋)
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