世界のアスリートが熱戦を繰り広げ、次々と新しいスターが誕生するパリ五輪。寝る間も惜しんで観戦する向きも続出していますが、なぜスポーツはここまで人々を惹きつけるのでしょうか。今回のメルマガ『富田隆のお気楽心理学』では著者で心理学者の富田さんが、「スポーツには危険がつきものだからこそハマってしまう」との持論を展開。その上で、現代スポーツが置かれている現状の考察や「観戦の心得」を綴っています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:スポーツ狂
スポーツ狂
電車の中であくびをしたり爆睡している人が増えています。
パリのオリンピック観戦で睡眠不足なのだとか。
猛暑に睡眠不足では生命を削っているようなものですが、あなた様におかれましては、お元気にお過ごしでしょうか?
本当にスポーツは観てもやっても、あまり身体には良くないもののようです。
このように書くと、私がスポーツ嫌いか何かのように誤解されるかもしれませんが、私はスポーツが大好きですし、機会があれば、野球でもサッカーでも熱く観戦し、我を忘れてしまいます。
ただ、魔性の女ではありませんが、魅力的なものには必ず危険が隠されているので、何かにつけて「ご用心ください」と言いたいのです。
スポーツに危険は付き物ですし、それが故に、私たちの血が騒ぎ、危ない魅力にハマってしまうのです。
もちろん、同じスポーツとは言っても、のんきに楽しみながら無理なく身体を動かすようなものは健康増進に役立っているはずです。
体力に応じてグランドゴルフなどを楽しんでいるお年寄りは少なくありませんし、この種のスポーツに親しんでいる皆さんは、概(おおむ)ね健康です。
それに、平和的で洗練された比較的安全なスポーツというものも、無いわけではありません。
しかし、頭部を強打するボクシングや炎天下のマラソンを考えれば分かることですが、危険なものも少なくないのです。
プロが本気になって闘うようなスポーツはいずれも命懸けであり、生命の危険と引き換えにお金を稼いでいるわけです。
それにもかかわらず、現代では競技に潜む危険性も関連組織の堕落も上手に糊塗されていますから、まるでスポーツが身体に良い健全なものであるかのように思い込んでいる人も少なくないわけです。
麻薬や酒と同様に、危険だからこそ人はスポーツに魅かれます。
これはもう「893」さんが仕切る領域のものですから、当然いかがわしいわけで、不正や八百長も後を絶ちません。
ところが、テレビなどが、朝から晩までスポーツの「明るく健全なイメージ」を繰り返し拡散していますから、社会経験の乏しい小さな子供などは簡単に洗脳されてしまいます。
ですから、小学校6年生に訊いた「将来就きたい職業」(男女総合 2023年度)のナンバーワンは、ダントツ「スポーツ選手」です。
戦後一貫して続けられた、マスメディアによる「印象操作」は見事に成功したと言えるでしょう。
こうした集団洗脳を解くためには、異文化や過去の時代を比較参照する必要があります。
たとえば、スポーツと殺し合いが峻別されていなかった古代を振り返ってみれば、もっと事情は分かり易くなります。
「コロシアムで殺し合う」という駄洒落もありますが、古代ローマで行われていた剣闘士の殺し合いとなると、さすがに現代の常識からしても、野蛮で堕落した娯楽であるとみなされてしまうはずです。
皇帝に「パンと見世物」を要求するだけの堕落したローマ市民は、殺し合う剣闘士の人権や社会的矛盾には無関心で、同様に、環境問題にも無関心でした。
ですから、一時の血生臭い興奮に酔っている自分たちもまた、鉛でできた水道管から溶けだした鉛毒でゆっくり命を縮めていたのですが、そんなことは夢にも思っていなかったでしょう。
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