トランプ、マスク、安倍晋三。平気でデマ情報を拡散したり歴史を改竄する人たちは「何を」守ろうとしているのか?

 

「英国での内戦は避けられない」と煽りまくったイーロン・マスク

そして、このデマに目をつけたのが、極右団体「イングランド防衛同盟(EDL)」の創設者で極右活動家のトミー・ロビンソン(本名スティーブン・ヤクスリー・レノン)だった。まだ41歳、今年11月で42歳になるトミー・ロビンソンは、これまで傷害罪や詐欺罪や他人のパスポートの不正使用などで4回も実刑を食らってる上に、執行猶予がついて実刑を免れたものも入れると、違法薬物の所持や脅迫やストーカー行為や裁判所の命令違反など前科は軽く10を超える。

そんなロビンソンは、この7月にも難民に関する虚偽の主張を繰り返したことで、法廷侮辱罪にも問われてた。そして、その審理が7月にあったんだけど、ロビンソンは出廷せずにイギリスからトンヅラし、今は地中海のキプロス島に潜伏してる。で、ロビンソンは、潜伏先のキプロス島から、100万人近くいる自分のX(旧ツイッター)のフォロワーたちに、今回のサウスポートの殺傷事件の容疑者の少年を「ボートで入国した違法移民のイスラム教徒だ」とするデマを拡散した上で「行動を起こせ!」と煽ったのだ。

以前から「移民、特にイスラム教徒はイギリスにとって害悪でしかない」と主張して来たロビンソンのXのフォロワーは、その大半がロビンソンの主張に同調する「反移民」や「反イスラム教徒」という思想を持った極右勢力だ。そのため、ロビンソンの「今回も不法移民のイスラム教徒によって何の罪もないイギリスの子どもたちが犠牲になった。一体どれほどの事件が起これば、お前たちは怒りの行動に出るのか?」という煽りに、多くのフォロワーが簡単に乗せられてしまった。

まるでドナルド・トランプに扇動されて議会を襲撃したトランプ信者たちのように、ロビンソンのフォロワーたちはイギリス各地で「移民排斥デモ」を行なった。それは事件が起こったサウスポートの周辺だけでなく、イングランド北部のロザラムや中部のリバプールなど、少なくとも35もの都市で「反移民」「反イスラム教徒」のヘイトデモが行なわれた。

しかし、日本で在日コリアンに対するヘイトデモを繰り返す恥知らずどもを見れば分かるように、そもそも排外主義者に常識など通用しない。ネット上の極右サイトには難民申請中の人たちが滞在するホテルの一覧が表示され、冒頭に書いたように、暴徒化したデモ参加者たちはそれらのホテルに放火して回った。

そして、この暴動をさらに煽ったのが、X(旧ツイッター)の私物化が批判されてる米実業家のイーロン・マスクだった。イギリス各地での暴動がエスカレートして行く中、マスクは8月4日、自身のXに「イギリスでの内戦は避けられない」と投稿し、暴動が内戦にまで発展する可能性を示唆して煽りまくった。イギリスのスターマー首相の報道官は、マスクの投稿を厳しく批判し、ロイター通信は「イーロン・マスク氏がイギリスの暴動を掻き回している」と批判的に報じた。

で、ここで少し前に戻るけど、極右で反イスラム活動家のトミー・ロビンソンは、さっき書いたように数々の前科があるだけでなく、罪には問われてなくても、SNS上でのイスラム教徒や移民に対する過激なヘイトスピーチやデマの拡散を繰り返して来たため、2018年にはツイッターのアカウントを規約違反で「永久停止」されてた。

だけど、2022年10月、ツイッターを買収したイーロン・マスクは、ドナルド・トランプを始め、それまでに悪質なヘイトスピーチやデマの拡散などでアカウントが停止されてた悪質ユーザーたちを、2023年から「恩赦」と称して次々と復活させたのだ。BBCが追跡調査したところ、マスクが復活させた約1100のアカウントのうち、少なくとも190のアカウントが過去以上に憎悪と暴力的表現を助長させており、その筆頭がトミー・ロビンソンだったという。

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