現役探偵も激怒。文科省「いじめの重大事態ガイドライン改訂」が被害当事者と家族への朗報にはならなかった当然の理由

 

「反撃などできないだろう」。文科省の露骨なやり口

こうした意見は、いわゆる学校側や加害者擁護側から出ており、特に学校側の立場に立ち、彼らが隠ぺいをする事を容認する立場を取る御用専門家などの意見は、文科省にダイレクトに響くだろうと私は警戒していた。

だから、この「いじめの重大事態ガイドライン」の改訂素案が寝耳に水で突然、6月19日に出てきて、被害側のほぼ100%の人が、そんな話、聞いたこともないと驚き不満を漏らす様子を見て、文科省もなかなか露骨にやるなと思ったのだ。

例えば、露骨に物事を進めれば反発も強くなるから、物事を穏便かつ狡猾に進めるならば、形骸化した勉強会でもやればよかっただろう。ちょっと電話でもして意見を聞いても良かったのではないかと思うのだ。それが日本式渉外ではよくあることのはずだ。

ところが、今回はそれすらしなかった。つまり、専制国家が突如隣国を攻めるように反撃などできないだろうと踏んでのことなのだ。

さらに文科省の専制は続く。6月19日の「いじめの重大事態ガイドライン」改定素案の公表から、意見公募、いわゆるパブリックコメントを募ると発表した。しかし、いつまで経ってもパブコメには掲載がされなかったから、私は関係先にパブコメ出たら教えてくださいと頼んだ。記者クラブに事実上のプレスリリースをして、まさかパブリックコメントをしないとかないよなと不安になるほどであったが、7月12日ごろ、やっとパブリックコメントができるようになった。しかし、期間はびっくりするほど短期間で、8月2日には締め切られている。さらに、この8月前に、8月末にはガイドラインを改訂するつもりだとの談話もあったのだ。

私は被害関係者などが多く、この意見公募(パブリックコメント)を知ることができるようにSNSに投稿したり、参考になるリンクを貼ったり、気が付いていそうにない人に直接連絡を取るなどしたが、素案自体の文量も多く、言葉が巧みであるし、実際の運用からの考察など専門性もある事から、読み込み、意図を理解し問題点や現実の問題を文章として提示するとすれば間に合わない人もいるだろうと焦った。

2024年8月30日に文部科学省初等教育局児童生徒課が発表した内容によれば、意見公募手続きで寄せられた意見は合計866件に達した。しかし、この通知で取り上げられたのは僅か39件であり、学校教職員ではないかと思われる意見が大半を占めた。他800件以上の意見は今後の参考にすると断じて、主な意見の概要に少しだけ羅列されただけであった。

さらに、これだけの意見が短期間で寄せられたのにもかかわらず、ほぼ素案を変更しないままに8月30日にガイドラインは出来ましたと記者クラブに言い、ちょっとだけニュースになったところで、このドタバタ劇は幕を閉じたのだ。

通例、こうしたことを議論する有識者会議は頻繁に行っても月1度か2度、8月2日に意見を閉め切り、30日に発表するにしても会議で議論を交わし、これら修正などに文案を作り、直すと考えれば、30日発表でやるなら大変な作業になろうが、予め談話を出した通り、予定調和で終わらせたと考えるならば、可能な期間とも言える。

これでは、意見公募手続き自体が形骸化した以上の、無視する通過儀礼と捉えても良いのではないだろうか。この露骨なやり方は被害側のみならず、子を持つ親世代や実際の当事者となるこどもへの信用失墜行動とも言えるだろう。

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