現役探偵も激怒。文科省「いじめの重大事態ガイドライン改訂」が被害当事者と家族への朗報にはならなかった当然の理由

 

改訂版に加えられた「第三者性の確保」を不可能にする項目

その昔、学校の先生に「教育委員会に言うぞ」というのは教師がビビる脅し文句のように扱われていたが、現実は真逆だ。そもそも教育委員会と学校教員はその元は同じである。人事もほぼ同一に近く、現場と事務方という分け方の方がしっくりくるだろう。これは学校長などの管理職も同様で、教育委員会に人事で戻り出世するというパターンがあるほどだ。

一方で、学校業界には、いわゆる任意団体として、校長会などがあり、地域懇談会などでは、校長や地元警察、自治会長やその地区の議員やPTAの重鎮などが交流を深める会があったりもするわけだ。

私はそうしたところから研修会を依頼されたりしていたから、そうした会が相応に力を持っていることを知っている。まあ、干してもらって全然構わないと思っているからここに示すが、地元のNPO法人や社会福祉法人さんなど様々な団体やそれこそ大学教授なども、こうした教育系任意団体から睨まれたら途端に廃業してしまうものだ。特に小さな学用書などを出版している会社はひとたまりもない。教育関係者だけが読む本がなぜか何万部と売れるのも、教育業界が受けいれれば、図書館や学校の図書室などには配本されるわけでそれは予め売り上げの見込みともいえよう。最たるものが教科書だ。現実に教科書会社が地域の公立校で使う教科書を決める権限がある教育委員に賄賂を贈った事件はすでに報道されている通りだ。

無償で被害者支援を打ち出し、対立を怖れずに被害当事者やその家族などを支援する私からすれば、隠ぺい側に加担して利益を得ることなどまっぴらご免であるが、人は目先の利益や脅しに弱いという現実を何度も見せられてきた。

こうした勢力図があり、町内会や友人知人で作った何かのクラブと同等の法的根拠しかない校長会などの任意団体がその実、大きな力を持っていることは、現実に会合や会議などに校長会の会長を文科省は呼んでいるのだから、知っているはずなのだ。

それにもかかわらず、今回の「いじめの重大事態ガイドライン」改訂版には、このような項目が足されたのだ。

6章第2節
例えば、域内の他の学校を担当するスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、地域で活動する弁護士や医師、学識経験者等が、職能団体等からの推薦を受けて“第三者”の立場からも調査組織に加わる場合について、当該重大事態が発生した学校と同じ地方公共団体内で職務に従事していたとしても、これまで当該学校での勤務実績がなく、当該重大事態の関係者との関わり(相談・支援等)が認められないなど、直接の人間関係又は特別の利害関係がなければ、第三者性は確保されていると考えられる。
(文科省いじめの重大事態ガイドラインより)

一般的な良識で考えれば、上段部分で「地方公共団体内で職務に従事していた」段階ですでに関係者としてみるべきであり、「第三者性」は「確保」できないと考えるべきだろう。

第三者性というのは、そもそもあの人はいい人、大岡越前のような中立公平な大岡裁きの人だからという人柄ではなく、利害関係などその関係性がないことが証されることが大事であって、重要なのはその担保である。

ガイドラインに、言葉遊びのような項目を設けること自体、現場の混乱を招くばかりか、隠ぺい側に有利になるいじめ問題の進展を妨害することにしかならない。

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