「不登校」を軽く見ていると判断せざるを得ない文科省
「いじめの重大事態ガイドライン」においては問題だらけなのだが、全てを指摘するととんでもない長文になりそうなので、ほとんど割愛するが、不登校と重大事態いじめについてガイドライン上の在り方を最後に指摘しよう。
重大事態いじめについては冒頭に書いたように、「いじめにより児童生徒の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき(1号事案)やいじめにより児童生徒が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき(2号事案)」とあり、1号事案は生命や心身又は財産に重大な被害が生じたとされるが、多くは自死してしまった事案を扱うことになる。2号事案は不登校としていじめを受けたとなってから通算で30日以上の欠席により、いじめで不登校の状態になったものを指すが、多くのケースで、いじめによる適応障害となってクラスに入れないとか、フラッシュバックが起きて学校にいることが不可能となるなど1号要件と被るものが現実にはあるが、運用としては2号事案で対応する学校や教委等が多いのだ。
そして、この2号事案についてガイドラインはこのような対応を推奨した。
不登校重大事態については、これまでも詳細な事実関係の確認や再発防止策の検討だけでなく、対象児童生徒の学校復帰や学びの継続に向けた支援につなげることを調査の目的として位置付けており、学校内の様子や教職員・児童生徒の状況は対象児童生徒が在籍する学校が最も把握していることを踏まえて、引き続き、原則として学校主体で調査を行うこととする。ただし、従前の経緯や事案の特性、対象児童生徒又は保護者の訴えなどを踏まえ、学校主体の調査では、調査目的を達成できないと学校の設置者が判断する場合や、学校の教育活動に支障が生じるおそれがあると学校の設置者が判断する場合には、学校の設置者主体として調査することを妨げるものではない。
(文科省いじめの重大事態ガイドラインより)
但し書きはあるものの、原則的には学校主体の調査でよいと解することができる。
そもそも不登校となった状態は学校側対応にも大きな責任がある。まず、学校においては「いじめ防止義務」がハッキリとある。つまり、児童生徒が被害を受け、回復が困難となって登校できない状態という悪化状態に陥ってしまうほど対策が遅れたり、しなかったという責任だ。
ここまでいくと、児童生徒本人や保護者は学校に信頼感を喪失するのみならず、対立しているケースが圧倒的に多い。私はその存在自体が対立の元凶だと悪の権化のような言われようをしているが、実際は全く異なる。すでに被害側から相談を受けた時には激化した対立状態であり、相互に調整をしたり、法律上学校側がやらなければならないことを怠っている場合は、それを指摘するのみならず、やり方がわからないと言われれば、各事例を示し、やり方を教えたりする。
対立するよりはいじめを解消するためにできることをやりましょうというスタンスなのだ。
ただ、やはり、相談がある頃にはほぼ9割の方が対立状態。信頼感はほぼ100%に近く喪失しているのを目にしているし、そうなるだろうことを学校はしっかりやっているのだ。
また半数程度は担任教員や学校長が、いじめを推奨しているような発言をしていたり、加害者を擁護するなど、不適切対応が確認できたりする。
もはや対立しているだけでも、その一方が第三者委員会的役割をするのはもはや絶望的だろう。だから、但し書きをつけたのであろうが、現場にいる身からすれば、但し書きは学校が主体となって調査をする方での項目であり、ガイドラインに書かれた但し書きの方がメインの項目にすべきではないかと思うのだ。
また、一方で、1号事案の要件と2号事案要件が重なって重大事態いじめとなるケースが多いことも鑑みれば、1号と2号で分ける必要性はないし、その対応がガイドライン上で特筆して分けて考えるのは、2号事案を甘く見ていると言わざるを得ず、世間の目を気にして「多様な学び方」と謡いつつも、その実、「登校こそが学び」という多様性反対の匂いが漂ってくると感じざるを得ない。
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