現役探偵も激怒。文科省「いじめの重大事態ガイドライン改訂」が被害当事者と家族への朗報にはならなかった当然の理由

 

企業の第三者委員会とは全く別物の「いじめ第三者委員会」

一般的な企業の不正などで登場する第三者委員会は、厳密に第三者で構成され、それで委員交代ですか?と問いたくなる理由でも厳密に関係性が無いように配慮する。また、企業の場合は経営者や従業員、顧客の他に株主の存在があり、ステークホルダーとして利害関係があるから、どこかが独断専行をしようとしてもブレーキがかかることもある。

また、企業で第三者委員会が設置される場合は、報酬は当然に会社が持ちつつも、第三者委員会に多くの調査権を持たせ、独立性の確保をする。

だからこそ、第三者であって、中立公正な判断ができると解するのであるし、「第三者委員会」自体がそのような中立公平で独立した組織であると一般的には認識されるのだ。

しかし、いじめの第三者委員会は違う。いじめ防止対策推進法を根拠に第三者委員会を設置することになるが、設置権限があるのは「学校」もしくは「学校の設置者」となり、再調査の場合は首長などが設置することになる。

ここでいう、学校の設置者とは公立であれば教育委員会、私学であればその学校法人ということになる。政令指定都市やそこそこ大きな都市を抱える自治体では、迅速にいじめ問題に当たれるようにするという名目で、いじめ問題についての連絡協議会や常任の調査委員会などを設置しているが、これは、学校の設置者たる教育委員会直下に組織されたものとなる。

一方、多くのニュースで公表されているように、学校や教委は過去最大数と言われた重大事態いじめのうち、およそ4割をそうなってから知ったという体たらくさであり、残り6割についても、生命や財産など大きな問題となる重大事態いじめとなるまで手が打てない状態であるから、ほぼほぼ、いじめの第三者委員会は学校の設置者が設置していたとしても、同時にその設置者に当たる教育委員会の対応や予防策や予防教育の在り方も調査対象に及ぶのである。

一方で、いじめの場合は、ステークホルダーとして良い意味でブレーキになるようなものがいないのだ。唯一、学校側と異なる立場となるのは被害側であり、いじめを本音では無かった事にしたい学校や加害者側は利害が一致しやすい。

さらに、いじめの場合、第三者委員会は強制権を持たず、

「教育委員会 → いじめ防止等常任委員会 → 各いじめ事件の第三者委員会」

というように、調査対象になりやすい教育委員会の下の下の組織というケースが多い上、独立した組織であるということを認められないケースもある。

つまり、いじめの場合は厳密に第三者を選定し、中立公正さを担保する要件は専門家が少ない地方では確保することが困難であり、他地域から呼ぶ必要性が最低限出てくる。一方で、独立性を確保するにもその組織形態から第三者委員会の委員長が相当しっかりしていない限りは困難を極めるのである。

これでは、企業の第三者委員会とは全く別物と考えざるを得ないだろう。

なので、私は自社内では調査委員会と呼び、ところによっては、「あの調査委員会は、隠ぺい推奨委員会、とか、学校忖度委員会だ」という場合もある。

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