現役探偵も激怒。文科省「いじめの重大事態ガイドライン改訂」が被害当事者と家族への朗報にはならなかった当然の理由

Chiyoda,Ward,,Tokyo,,Japan,-,February,2023:,Ministry,Of,Education,
 

8月30日に改訂されるも、メディアがほとんど報じることのない「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」。その内容は「誰のための改訂」であるのか首を傾げたくなるものであるようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、この改訂を「文科省劇場のドタバタ劇」と一刀両断した上で、そう判断せざるを得ない背景を解説。さらにすべての大人が心に刻むべき、改訂されたガイドラインを読んだ重大事態いじめの被害者の声を紹介しています。

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※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:46万人という衝撃

「当事者」は存在せず。いじめの重大事態ガイドライン改訂は誰のため?

2024年8月30日に「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」が改訂された。

この改訂についてはニュース記事の数が少ないため、関係する被害者や関心を持つ地方議員の方々から私の元に問い合わせが入った。僅かに流れた改訂されたというニュースに、実際のガイドラインが公表されていないということで、ガイドラインを早く読みたいという方々からも、原本を持っていれば見せて欲しいという問い合わせもあった。

9月9日の段階ではすでに文科省のホームページにも掲載されているから、PDF文書を確認することはできる。

私から見れば、文科省劇場のドタバタ劇だ。

2024年6月19日、いじめ重大事態のガイドラインの改訂案が出るとニュースで知った。そもそも「いじめの重大事態」は「いじめにより児童生徒の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき(1号事案)やいじめにより児童生徒が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき(2号事案)」と決められており、一般的にイメージするならば、ニュースになってその内容を世間が知り、多くの人がその残酷さや酷いいじめの実態に憤りを感じるような大問題のことである。

被害側の支援団体や遺族会など、連絡が取れる人に聞いてみたが、誰一人、この改訂素案が話し合われていることなど知らなかった。通例、こうした改訂をする際は、文科省の担当部署や関わる国会議員などが勉強会を行って被害経験者等から話を聞く機会を設ける。

馳浩元文科大臣が座長を務めたいじめ防止対策推進法改正の際、様々な被害側の意見が多くの国会議員さんや文科省の職員、大学教授などの前で検討され、もうほぼ改正案が出来上がったところで馳座長が突如、独自の骨抜き座長試案を提示し、法改正がとん挫したが、このような時でも当事者に話を聞くという勉強会は行われていた。

しかし、今回のガイドライン改訂では、当事者は存在していなかったことになる。

実のところ私は、個々に行われる、いわゆるいじめの第三者委員会において職能団体となるところや被害側に耳を貸さなくなった文科省が連絡や相談をしやすい専門家から漏れ聞こえる情報を得ていた。

ひとつはいじめの重大事態における第三者委員会の委員の選任が難航することが多い割に専門家と呼べる実績がある人が少なく、地方だとそもそもで専門家がいないというところもあり、常任の委員会に老後の成り行きで民生委員になっている人やPTAの役員でまかなっているところもあり、このハードルを下げたいという意見が多いからこれに応じようとか、被害側の声が大きいからその声を下げさせようなどについて話し合っているという情報だ。

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