石破首相「裏金議員なんちゃって処分」のカラクリ
もちろん、こうした「その他の裏金議員」についても、石破首相は「地元の県連から公認申請がなかった場合は公認しない方針だ」と説明しましたが、逆に言えば「県連から公認申請があれば地元の判断を優先して公認する」ということなのです。事実、裏金議員の大半は、すでに地元の都道府県連から党に公認申請が提出されており、実質的に「非公認」となるのは、現時点の6人を含めて10人ほどにしかならないと見られています。
当然のことながら、林幹雄や杉田水脈は誰よりも早く県連の公認申請を提出しましたが、呆れ返ったのは「比例単独」を申請した杉田水脈です。出馬すれば昼寝していても当選できる自民党の「比例単独」には「2回まで」という党内ルールがあり、杉田水脈は2017年と2021年の衆院選で中国ブロックの比例単独で当選しているので、次からは小選挙区に出馬するしか道はありません。それなのに、党内ルールを無視して「昼寝していても当選できる比例単独」を申請したのです。
ま、石破首相の思考回路が正常であれば、こんな自己チューな申請など受け付けないと思いますが、ここまで二度も三度も総裁選での自分の主張を「ちゃぶ台返し」してきた焦げたアンパンマン、略して「コゲパンマン」こと石破首相です。またまた党内圧力に屈して「らしくない行動」に走ってしまう可能性もあります。
それに、今回の「なんちゃって処分」には、自民党として絶対に譲れない大前提があるのです。それは議席数です。衆議院は465議席なので、過半数は233議席いじょうですが、自民党は現在258議席の単独過半数を押さえています。つまり、自民党は今回の衆院選で25議席を失っても単独過半数を維持できるのです。この25議席が、自民党が失ってもいい議席数のデッドラインというわけです。
このような状況で、果たして40人近い「その他の裏金議員」全員を「非公認」にするでしょうか?だって、そんなことしたら「非公認」にした時点で単独過半数を失うんですよ?さらに言えば、自民党と連立を組む公明党は32議席ですから、自民党が「26+32=58議席」を失えば、自公連立でも過半数を割ってしまうのです。
公明党は「自民党が非公認とした候補者の支援はしない」と明言しましたが、これはつまり、どんな裏金議員でも地元の県連の公認申請を党が認めた場合は「地元の創価学会員が総出で支援する」という意味なのです。たとえ比例重複が認められなくても、公明党の全面協力が得られれば、小選挙区での当選の確率は一気に増大します。これが、今回の「なんちゃって処分」のカラクリなのです。
国会ではすでに、立憲民主党の野田佳彦代表らが「結果的に大半の裏金議員が公認される仕組みであり、これではとうてい国民の理解は得られない」などと厳しく批判しましたが、もともと失える議席数が上限25での攻防なので、石破首相としては「10人前後の目立つ議員への非公認」が精いっぱいなのでしょう。
しかし、自民党が選挙を「禊(みそぎ)」だと言うのなら、やはり裏金議員全員を「非公認」にして、それぞれの地元での有権者の声を選挙にダイレクトに反映させるべきでしょう。そして、自力で小選挙区の有権者に再選された議員だけが「禊が済んだ」と胸を張って自民党に戻って来るべきだと思います。
そして、これくらいの大英断ができれば、石破首相も本物のヒーローであるアンパンマンに少しは近づけると思います。5回ものチャレンジの果てにようやく首相の座へ上り詰めたのですから、この千載一遇のチャンスを最大限に生かして、自民党の悪しき体質を根本的に是正した本物のヒーローとして100年先まで名前を残すのか?それともこのまま似非ヒーローであるコゲパンマンとして、未来永劫、汚名を残すのか?それは、今回の衆院選で石破首相が裏金議員たちをどのように処遇するか、その一点に懸っているのです。
(『きっこのメルマガ』2024年10月9日号より一部抜粋・文中敬称略)
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