四面楚歌のゼレンスキー。米バイデンに乗せられプーチンに「勝利宣言」した男にウクライナ国内で排除の動き

 

プーチンがウクライナの制御に強くこだわる理由

現在の案件でいえば、ロシア・ウクライナ戦争やイスラエルとパレスチナの戦争、イスラエルとイランの確執、イランと他のアラブ諸国との緊張などが考えられますが、その基盤にある根強い理由は「主導権争い」と言えるのではないかと思います。

ロシアについては、旧ソ連崩壊後の混乱の下、ウクライナを含む旧共和国が次々に独立し、その多くに対して冷戦を戦い続けてきたアメリカや西欧諸国が入り込んできて陣営を拡大しようとしたという“意識”が根強く基盤に存在します。

旧ソ連の構成国中、ロシアは圧倒的な強さを誇り、唯一の核保有国としてソ連の核を継承する立場になっていますが、周辺国はそのロシアの横暴への警戒心と生存のために、カウンター・バランサーとしてアメリカや西欧諸国を引き入れています。

バルト三国は顕著な例で比較的迅速に条件を揃えてNATOの加盟国となり、ロシアと決別していますが(ゆえにプーチン大統領からは常に裏切り者と罵られるのですが)、そのような決断に至った大きな理由の一つが自国の存続・生存の保障にあります。常にバルト三国はロシアからの侵攻の脅威に曝されつつも、NATOの一部になることでNATO憲章第5条の集団自衛権の行使対象になることでその目的を果たそうとしています。

スタン系の国々は、ロシアとの近しい関係を保ちつつも、上手に欧米の影響も受け入れてきていますが、時にプーチン大統領の怒りを買い、侵略されていますが、それでも上手な距離感を保って存続しています。

しかし、ロシアにとってウクライナとベラルーシは、他の旧ソ連構成国とは違い、不可分の存在という意識が強く、そこに欧米の影響力が拡大し、ロシアと対峙する体制ができることは許容できないという不文律が存在するため、この3か国の結束の維持にはただならぬ労力と政治力を駆使すると言われています。

今回のウクライナへの侵攻は、ロシアの頭の中では侵攻ではなく、あくまでも特別作戦と呼ぶように、自国勢力圏のコアにおける反乱分子の除去・掃討作戦であり、特にロシア系住民の権利を保護するための必要なオペレーションという理解が強いと、当該地域の分析を行うチームが認識しています。

「同胞ウクライナに欧米の手が入ることは、ロシアが緩衝地帯を持たずに、欧米の勢力と直に対峙するということになり、それはロシアおよび周辺同胞の国家安全保障上、超えてはならぬレッドラインを踏み越える暴挙である」というのが、プーチン大統領たちがウクライナの制御に強くこだわる理由の一つだそうです。そしてロシアとしてのプライドを守るのが、ロシアのリーダーとしての役割だと思われます。

とはいえ、やはり2000年ごろに主権を持つ国家となっている隣国に武力で侵攻するのは、どのような理由を並べたとしても絶対に許容できないものであることは断言できますが、紛争調停官としては、どのような心理が行動の背後に存在するのかを理解しなくてはならないため、ロシアの言い分は、例え全く同意できなくても、真剣に聞き取り、理解する必要があります。

ウクライナについては、そんなロシアから攻め込まれたから、国の存続のために戦うというロジックが明確に成り立ちますし、個人的にはフルにサポートするのですが、ロシアによる侵攻から2年半が過ぎた今、ロシアによる圧倒的な力に対して、力で対抗するというやり方が適切なのか、一度戦略を練りなおす必要が出てきているように見えます。

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