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トランプの「移民は犬や猫を食っている」というデマを盲信。完全に洗脳された米国民が担ぐ“新型カルト政権”の恐怖

多くの日本メディアが直前まで接戦を予想していたものの、結果はトランプ氏圧勝に終わったアメリカ大統領選挙。有権者たちはなぜ選挙期間中も数々の「デマ」とも言える情報を流し続けたトランプ氏を、次期大統領に選択したのでしょうか。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、ニューヨーク在住の邦人ジャーナリストによる報告で明らかになった、トランプ支持者らの驚くべき実態を詳しく紹介。その上で日本を含む国際社会に対して、来年1月にアメリカで誕生する「新型カルト政権」への早急な対策の必要性を説いています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:アメリカの選択

「デマ製造機」で「犯罪者」。それでもトランプを返り咲かせたアメリカの選択

11月5日(日本時間6日)に投開票日を迎えたアメリカ大統領選挙は、日本では民主党のカマラ・ハリス副大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領が僅差で競り合っていて、場合によっては結果が出るまでに数日ほど掛かるかもしれない…と報じられて来ました。しかし、フタを開けてみると、当日の夕方にはアメリカの各メディアが「トランプ氏の勝利」を伝え始め、それを受けてトランプ氏が勝利宣言をするという呆気ない結末となりました。

そもそもの話、日本のマスコミの「僅差」という報道を、あたしはとても懐疑的に見ていました。それは、あたしのアメリカ在住の複数の友人たちが、バイデン対トランプの時から口を揃えて「トランプが大きくリードしてる」「バイデンには勝ち目がない」と言っていたからです。そして、民主党が候補者をハリス副大統領に変更してからも「遅きに失した」「もっと早く変更していれば勝てる可能性もあったのに」などと言っていたからです。

あたしは、もちろんハリス氏を応援していましたが、それは「トランプよりはマシ」というだけの選択であって、決して積極的な支持ではありませんでした。イスラエルに大量の武器と資金を援助しながら「アメリカの未来」を語られても、とても積極的な支持などできないからです。しかし、もともと強いイスラエル支持を掲げているトランプ氏が大統領に返り咲けば、ガザの惨状がさらに悪化することは明白です。

さらに言えば、トランプ氏は自分の支持者らを扇動して国会議事堂を襲撃させ、10人の死者と1,000人を超える逮捕者を出しただけでなく、計34件もの罪状すべてで有罪判決を受けていて、最長で禁固4年の実刑になると見られている犯罪者なのです。そんな人物が大統領になるなんて、独裁国家ならともかく、民主国家では普通はありえません。

また、トランプ氏と言えば次々と嘘やデマを垂れ流すことでもお馴染みです。今回の大統領選でも、トランプ氏は数々のデマを垂れ流しました。日本でも報じられた例で言えば「オハイオ州スプリングフィールドに流入して来たハイチ系の移民たちが、そこに住んでいる人たちのペットの犬や猫を盗んで殺して食っている」という、とんでもないデマです。

ちなみに、トランプ氏はスプリングフィールドで生活している移民を「不法外国人」と呼び、このデマでも「流入して来た」という表現で、あたかも不法に入国したかのように言っていますが、彼らはすべてアメリカ政府の許可を得て合法的に滞在している移民です。他にもトランプ氏は、テイラー・スウィフトさんや彼女のファンたちが自分を支持しているような捏造画像を拡散したりと、長い選挙期間中、ずっと「デマ製造機」のような状態でした。

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「デマを信じるのは一部の狂信的トランプ支持者だけ」の誤り

しかし、いくら何でも、こんなデマを鵜呑みにするようなバカは一部の狂信的なトランプ支持者だけで、大半のアメリカ人は、たとえトランプ氏に投票したとしても、それは経済政策などで現在のバイデン政権よりはマシだと考えての一票だったと思っていました。つまり、結果としてトランプ氏が大統領の座に返り咲いたとしても、トランプ氏を支持した国民の大半は、トランプ氏が垂れ流した嘘やデマなどは「選挙戦略の1つ」として受け流した上で、政策面で選択したのだと思っていました。しかし、現場はまったく違っていたのです。

投開票日の翌日の11月7日(木)、文化放送「長野智子アップデート」に電話出演したニューヨーク在住のジャーナリスト、津山恵子氏は、激戦7州の中で特に結果を左右する東部ペンシルベニア州の最大都市フィラデルフィアでの取材を、以下のように報告してくれました。

伝統的に民主党支持のフィラデルフィア郊外の街で、最近は共和党支持者が増え続けていると聞いたので、取材に行って来ました。街に近づくとトランプとバンスの看板が並んでいて、トランプ支持が増えていると感じました。

街のショッピングモールや投票所で片っ端から聞いてみましたが、バイデン政権になってインフレで物価が上がり生活が苦しくなったという声が多数でした。アメリカ全体の経済は他国より良く見えますが、それは富裕層だけの話で、中間層から低所得者層は物価高でレストランにも行けないと言っています。アメリカでは経済的な格差が広がり続けているのです。

若い人たちは「自分の親たちは簡単に車や家が買えたが、今のままじゃ自分は車も買えない。家どころか、結婚の約束をしているガールフレンドと同棲するためのアパートすら借りられない」と言っていました。こういった切実な声がとても多かったです。

ま、こうした声が多いのなら、民主党支持から共和党支持に乗り換えた人、ハリス氏よりトランプ氏を選んだ人が増えたことも理解できます。しかし、あたしが驚いたのは、ここから先です。実際にトランプの集会を取材した津山恵子氏は、次のように報告したのです。

トランプの集会に行って驚いたのは、彼が「移民は犯罪者だ!」と言うと、集まった人たちが皆、その言葉をそのまま信じていたことです。トランプには、自分が流す嘘のニュースや偽の情報を信じさせる強さがあり、私はそれがとても恐ろしいと感じました。彼の集会の参加者に質問しても、誰もが彼の流す嘘のニュースや偽の情報を信じ込んでいるので、もう言葉が通じないんですね。

トランプ支持者は彼の流す嘘の情報を信じ込んでいるので、アメリカ人同士でもコミュニケーションが取れず、真っ二つに分断しています。11月の末に家族が集まる感謝祭があるんですけど、それに行きたくないという人たちまで増えているんですね。それは家族が集まった場で政治の話が出れば、トランプ支持と不支持とで論争になり、暗い雰囲気になってしまうからです。家族間でも分断が広がっているのです。

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「完全洗脳済み」のトランプ氏を選択した多数の米国民

そして、トランプ氏の当選が決まった今、今後について津山恵子氏に聞くと、次のように述べました。

今後はさらにアメリカ人同士の分断が深まり、もうアメリカはグローバルリーダーではなくなると思います。そして、ホワイトハウスに住んでいるのは、知的で常識を持った信頼できるリーダーだというこれまでの認識が、これからは無くなって行くと思います。ちょっと気が早いですが、この先10年くらいの大統領選挙を見たら、もっととんでもない人が立候補して来る可能性もあるのかなと、私は思っています。

トランプの集会に行くと、毎回必ず日本人のトランプ支持者のグループがいるんです。そして私がトランプに批判的な記事を書くと、SNS上でいろいろと反応して来るのです。日本の社会の中にも、このようにトランプ、もしくはそれと似た知識もないポピュリストを支持している人がたくさんいるような印象を受けます。そういう人たちが増えないように、私たちはきちんと正しいニュースを読み、意見が異なる人たちとも対話することを習慣にしたほうが良いと思います。

また、ハリス氏の敗因について、放送では次のようなやり取りがありました。

長野智子さん 「NYのコロンビア大学などで、ガザの状況に対して学生たちがストライキのようなことをやっていますが、それに民主党が応えられなかった部分は大きかったでしょうか?」

津山恵子氏 「それは大きかったと思います。この直前の日曜日にもとても大規模な反イスラエルのデモがありまして、そこでは『投票に行くな!』と呼び掛けていました。バイデン政権の政策を踏襲するハリスを支持するなと。これはNY市内だけでなく、全米各地で若い人たちがデモを行なっています。そのため、若い人たちを中心に投票に行かなかった人はかなりいたと思いますし、民主党の得票数に大きな影響を及ぼしたと思います」

今回のアメリカ大統領選の結果を受けて、日本では相変わらず「株価」や「為替」、「関税」など、日本の経済に直接関係する点が注視されていますが、これは世界各国も同様で、EUの国々はそれぞれの立場で、ウクライナやイスラエルもそれぞれの立場で、自国が最優先する問題点を注視しています。しかし、トランプ氏に投票したアメリカの有権者の大半は、他国のことなどどうでもいいのです。自分たちの生活を少しでも良くしてくれるのは、ハリス氏でなくトランプ氏だと選択したのです。

そして、トランプ氏を選択したアメリカ人の多くが、トランプ氏の垂れ流して来た「移民はペットの犬や猫を食っている!」だの「地球温暖化は嘘だ!」などを始めとした数々のデマを信じ込み、完全に洗脳されてしまっているのです。こうした現場の現実に目を向ければ、日本も世界の国々も自国のことはいったん脇に置き、来年1月にアメリカに誕生する新型カルト政権と対峙するために、経済や外交以外にも、あらゆる面での準備を早急に始めるべきだと思います。

(『きっこのメルマガ』2024年11月13日号より一部抜粋・文中敬称略)

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